発達障害者の“純粋なエネルギー”を活かす

70年近い発達障害者としての自身の経験からも精神科医としての臨床経験からも確信を持って言えることは、発達障害は決して無意味で厄介なハンディなどではなく、上手にコントロールし仕事や生活の中で活かせば、人生を深く豊かにする才能であり能力であるということです。

●興味を持ったことに集中し、決してあきらめないこと
●独自のこだわりは強力なエネルギーを生むこと
●人が思いつかないようなことがひらめくこと
●ひらめいたことは猪突猛進で実行すること

など、この純粋なエネルギーは、興味や関心の的と仕事や学業とが一致すれば、きっとその分野ですばらしい業績を残せるはずです。

そのためには、目の前の現実を虚心坦懐に観察すること。

自身も家族もありのままの姿を受け入れ、広い視野で将来を見るようにすれば、苦手なことに悩むことだけに陥らず、得意なことを見つけてそれを活かし生活することができるのです。「気づくこと、受け入れること、そして情熱を注いで生きること」。

本人やご家族、職場を含む周囲の人間が、現実に気づき自分を冷静に見つめなおすことができれば、治療の効果も上がり、改善の方向に向かう可能性は十分にあります。

さらに必要に応じて、薬の使用を検討することも必要です。適切に薬物療法を施していくと、発達障害は調整できます。

そしてぜひ、心から楽しめる「好きなこと」や「わくわくする時間」をみつけていただきたいものです。それが愚にもつかないことに見えても、発達障害を抱えて生きる方や家族の助けとなるでしょう。

星野 仁彦(ほしの・よしひこ)
心療内科医・医学博士。福島学院大学大学院教授。1947年福島県生まれ。福島県立大学卒業後、米国エール大学児童精神科留学。福島県立医科大学神経精神科助教授などを経て現職。専門は児童精神医学、スクールカウンセリング、精神薬理学など。発達障害を専門とする児童精神医学の第一人者。著書に『発達障害に気づかない大人たち』『発達障害に気づかない大人たち<職場編>』(祥伝社新書)、『発達障害を見過ごされる子ども、認めない親』(幻冬舎新書)などがある。
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