いまは平時の計画に固執するような時期ではないのである。
この不況は、回復までに最低でも1年はかかる。元の売り上げレベルに戻るのはおそらく2~3年後だ。しかしそのときには、まったく違う景色が現れる。緑の山が紅葉に変わるのではなく、山だったところに海ができるような変化である。
まず売り上げが半減する。しかし同じ商品が半分だけ売れるのではなく、同性能の商品を半額で売る努力が必要だ。ついていけない企業は倒産したり、再編の対象になったりするだろう。結果、生き残った企業は、次の景気回復期にはライバル数が激減したなかで、急増する需要を引き受けることになるはずだ。
生き残るための大前提は、生産性を上げること。いまの日本企業は「残業体質」に陥っている。生産性の低い人ほど長時間残業しているので収入が多い、というのはおかしな話である。フランスの会社(ヴァレオ)を買収してみて驚いたことがある。5時すぎに会社を訪ねると従業員はみんな退社していた。彼らは「時間」ではなく「成果」で評価される。だから定時に帰り、家族で夕食をとったあと、持ち越した仕事があれば自分の部屋で片付けるという。
私は欧米流の経営よりも終身雇用・年功賃金の日本的経営のほうが優れていると思うが、こと生産性に関しては、彼らのやり方を参考にしてもいいのではないだろうか。
(面澤淳市=構成 芳地博之=撮影)