アマゾンのビッグデータ分析は今後も「個の分析」の完成度を高めていき、やがては大量生産とパーソナライゼーションを組み合わせることで、マスカスタマイゼーションに着手することになるだろう――これが私の未来予測です。

アマゾンがユニクロの脅威になる

ここまでを踏まえて考えずにはいられないのは、「アマゾンがユニクロの脅威になる」という未来です。アマゾンはすでにプライベートブランドとして7つのファッションブランドを展開しています。そのうえで同社がプライベートブランドでファッションに乗り出すとすれば、最適な分野はユニクロが得意とするベーシック・カジュアルだといえます。アマゾンで高価なブランドを買うことに抵抗感をもつ人はいると思いますが、ベーシック・カジュアルであればブランドごとの違いも小さく、アマゾンも入り込みやすいのです。

顧客ネットワークを持ち、顧客のビッグデータを持ち、それをAIで活用できるアマゾンが自ら開発・製造・販売まで行なうアパレル業界の脅威・SPA企業となる――。

そしてその先では、おそらく「マスカスタマイゼーション」の時代が本格的に始まることになるのでしょう。つまり「ビッグデータ×AI」によって導き出した1対1のセグメンテーションを背景に、一人ひとりにあわせて製品をつくる。それを始めるとすればファッションから、というのが私の予測です。

そもそもアパレル・ファッションは、アマゾンの武器である「ビッグデータ×AI」を活かしやすい分野でもあります。消費者の志向を把握し、最適な商品を勧められるからです。アマゾン・エコーに続くスピーカー型人工知能の新機種「エコー・ショー」や、カメラ付きアレクサデバイス「エコー・ルック」との相性も抜群です。エコー・ショーは、タッチスクリーンつきで画像の表示や動画の再生が可能。エコー・ルックには顧客が撮影した画像からAIがファッション指南してくれるという機能が付いています。当然ながら、ここからもビッグデータを取得しており、今後の商品ラインナップに反映されていくことになります。

「メーカーとしてのアマゾン」という新たな顔

冒頭で「アマゾンのビッグデータ分析は個人を特定することを目的としていない」と述べましたが、個人を特定する意図はなくとも、顧客一人ひとりの購買を増やすため、そして顧客第一主義を貫徹するため、言い換えればユーザー・エクスペリエンスのさらなる向上のために、個の分析は不可欠です。将来的にはマスカスタマイゼーション、すなわち顧客一人ひとりにカスタマイズされた商品を企画、製造、販売するところまでを担うようになるはずです。

ECの王者アマゾンが、ネット上のエブリシング・カンパニーを経て、リアル店舗展開から小売り・流通の王者というポジションを狙うばかりでなく、メーカーとしてのアマゾンという新たな顔を持つ。そんな未来がすぐそこまでやってきています。

2017年5月に米国インターネット協会で行われた対談において、ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)はアマゾンのAI戦略についても触れています。本書の問題意識でもある「アマゾンはなんの会社なのか」「アマゾンは10年後どうなっているのか」「そこでAIはどのような影響を持つか」といった問いにもベゾス自身が答えている貴重な資料となっています。