慰謝料の請求は3年間で「時効」

配偶者が浮気したからといって必ずしも慰謝料が取れるとは限りません。例えば、夫婦関係がすでに破綻しきっていた場合などです。また、浮気相手に対しても、不法行為にあたらないとされて、慰謝料が認められなかった裁判例もあります。例えば、相手が独身者であることを信じて疑わなかった場合がこれにあたります。不倫に対する慰謝料請求は、損害および加害者を知ったときから3年間で「時効」となり、それ以降は請求することができなくなります。

『判例による不貞慰謝料請求の実務』や続編の同『主張・立証編』の執筆をしてわかったのは、不倫の認定や慰謝料が個々の裁判官の考えで変わりうることです。日本の裁判官は特に真面目な人が多く、不貞行為の経験がある人は非常に少ないでしょう。不倫関係に陥る当事者の心理や動機等を本当に理解したうえでの判決なのか疑問に思う裁判例もあります。不倫が裁判に至るまでもめると、その結果は、担当した裁判官の価値観等に大きく左右されることが往々にしてあるのです。

▼慰謝料の金額はさまざまな事情や状況で決まる
[慰謝料の金額を左右する主な項目と理由]

・婚姻期間
婚姻期間が長いほど、慰謝料は高額になりがち
・浮気発覚前の婚姻生活の状況
家庭が円満であった場合、浮気相手が家庭を崩壊させたと判断され、慰謝料が増額される場合が多い
・浮気の期間
長年にわたり繰り返されていた場合のほうが高額になりがち
・婚姻関係継続の有無
浮気が原因で夫婦が離婚に至った場合はかなりの増額になる
・浮気の主導者
積極的だったのが浮気相手であれば、慰謝料は増額される場合もある
・不倫関係解消の約束反故
不倫関係を解消し、2度としないと約束をしたのに再び浮気した場合は悪質と判断されて増額される
・夫婦間の子どもの有無
子どもがいる場合は婚姻関係破綻の影響、精神的ショックが大きいため増額要素になる
・浮気相手の認識、意図
浮気相手が、夫(妻)が既婚者であることを知っていたか否か。また、家庭を壊すつもりだったかどうかも増額の要素となる
弁護士 中里和伸
東京暁法律事務所。東京簡易裁判所民事調停委員。著書に『判例による不貞慰謝料請求の実務』などがある。
 

弁護士 野口英一郎
東京暁法律事務所。中里氏との共著に『判例による不貞慰謝料請求の実務 主張・立証編』がある。
 
(構成=吉田茂人 撮影=小川 聡)
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