激励や祝福の言葉を送りながら、敵意や怒りも同時に

自分のポストを失うのではないかという喪失不安が強いと、後輩や部下の活躍に対する嫉妬を抑えられない。そのため、激励や祝福の言葉を送りながらも、それと矛盾するメッセージを非言語レベルでは出さずにはいられない。

こういう人は、嫉妬、そしてそれに由来する敵意や怒りなどのネガティブな感情を言語レベルでは抑圧しようとすることが多い。このような嫌な感情が自分の心の中にあるという事実を認めたくないからだ。

もっとも、抑圧しようとすればするほど、「抑圧されたものは回帰する」というフロイトの言葉通り、ネガティブな感情が非言語レベルで出てしまう。ちょっと漏れるどころか、“ダダ漏れ”になることもある。

困ったことに、自分が相矛盾するメッセージを送っている自覚がない上司が少なくない。そのため、ダブルバインドの言動に歯止めがかからず、部下を混乱させ、職場をかき乱すのだ。

▼前任者のやり方を全否定せずにはいられない上司

男の嫉妬は、さまざまな形で表れるが、とくに厄介なのは、ケチをつけて、他人の価値を否定する言動だ。

たとえば、業績がよく、できる人材が集まった部署に異動してきた40代の男性部長は、前任者のやり方を全て否定しなければ気がすまないタイプで、部下の多くが閉口しているらしい。

この部長は、パイプ役として調整する能力はあるものの、仕事のスキル自体はそんなに高くないようだ。それでも、プライドが高いため、とにかく前任者のやり方にケチをつけ、ひたすら部下にダメ出しすることで威厳を保とうとする。

しかも、メディアで新たな手法が脚光を浴びるたびに、すぐに導入したがり、その研修に参加するように部下に命じる。そのため、「これまでのやり方で、うまくいっていたし、業績もよかったのに、なぜ変えるんだ」という不満があちこちで出ているのだが、そういう不満に部長は耳を傾けようとしない。それどころか、「どうだ。新しいやり方のほうが、うまくいくだろう」と同意を求めるので、部下は答えに窮するという。