バウチャー制度の活用が合理的

今、ほとんどの県で公立高校の無償化制度が実施されている。2010年からは私立高校でも家庭の所得に応じて就学支援金が国から支給されるようになっている。高校生1人の1年間の教育にかかる公立学校側の費用は大体50万円。自治体によっては、それを完全に負担しているところもある。完全無償化に向けて問題になるのは授業料が高い私立高校だが、ここはバウチャー制度の活用が合理的だろう。

高校生1人にかかる年間教育費の平均を50万円として、子供を公立高校に通わせる世帯には50万円分の教育クーポンを渡して終わり。私立高校に通わせる世帯では、50万円を超える差額は親が負担する。

立派な社会人をつくる段階においては、親が教育費用を負担するのは問題ない。もっと言えば、1人50万円の教育費の面倒を国がみてくれるのなら、それを使って生活コストの安い途上国などに半年程度留学する手もある。前述のように中高一貫教育なら1年の余白があるのだから、そうしたバウチャーの活用方法なども検討するべきだろう。

今や世界に影響を与える注目論文数の占有率で中国がアメリカに追いつき、日本は世界第9位に落ち込んでいる。文科省の教育プログラムは西欧社会に追いつけ追い越せ時代のものであり、答えがあった時代の遺物だ。このカリキュラムではこれからの世界で競争力のある人材は生まれてこないから、日本は間違いなくジリ貧になる。

教育の目的をハッキリさせて、世界に通用する立派な市民をつくり出す義務教育に切り替える時期にきている。健全な民主主義は、唯一賢明な市民によってのみキープされる。教育の成果として18歳に選挙権を与える、という点をハッキリさせれば、今の衆愚政治は起こらない。

そのような前提の下に義務教育を徹底的に見直して、国がその費用を全額負担する、という意味の教育無償化であるなら、私は諸手を挙げて賛成である。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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