安倍第3次改造内閣は看板政策として「人づくり革命」を掲げた。その目玉の1つが「教育の無償化」だ。「近い将来、AIが単純な仕事を代替する時代になるので、高度な職業人材の育成を国が支援すること自体は望ましい」と東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは解説する。現在、高等教育(大学など)無償化の財源として、使途を教育に特定する教育国債の発行が、政府内で議論されている。
しかし、教育国債とは要するに、国が借金をして教育無償化の財源を確保するということ。すると、将来世代がその借金のツケを払うことになる。こうした批判に対して、「高等教育を受けた国民が増えれば、所得水準が上がり、税収も拡大するので、借金の返済は可能」と推進派は主張する。
もっとも、画一的な教育無償化を図ると、志の低い大学進学者も増え、教育水準がさほど向上しないので、税収増は期待できないとの指摘もある。加藤氏は、「日本の財政赤字は極めて深刻な状況なので、大学教育の質をどう上げていくかという議論をしないまま、安直に国債発行による無償化を推進するのは考えものだ」と危惧する。大半の国民は、子どもの教育費がタダになる政策を歓迎するだろうが、国家財政が傷まない方策を練ることも重要だろう。
(写真=AP/AFLO)