お金があれば人は幸せになれるのか。犯罪加害者の家族を支援するNPO代表の阿部恭子さんの著書『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(幻冬舎新書)より、稼ぎの低い夫を飼い慣らしていた妻が受けた「しっぺ返し」を紹介する――。
男女のフィギュアが載っているシーソー
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです

経済力のない男性をあえて選んだ女性

本稿では経済的に自立した女性の悩みに焦点を当てたいと思います。

鈴木悦子は社会的に力のある父親を持つ裕福な家庭で育ちますが、進学や職業選択にあたって女性の選択肢は厳しく制限され、成績優秀にもかかわらず大学進学すら許されませんでした。

それでも悦子は、家族の支配から逃れるため、資格を取得し、ひとりで会社を経営できる社会的人脈と経済力を手に入れます。

悦子は支配的な男性の下で屈辱的な目に遭わされて育っています。そのため世間一般に言われる成功した男性は女性にだらしがなく、女性を不幸にするという思い込みが強く、あえて経済力のない男性との結婚を望みます。

悦子は裕福な家庭で育ち、働く気力のない男性との結婚を実現しますが、果たして望み通りの結婚生活が送れるのか、見ていきたいと思います。

「女は男を立てる」が家訓の家に生まれた女性

男性家族に奪われた未来――鈴木悦子(40代)

私の父親は都内で大企業の顧問をしている弁護士で、兄も弁護士をしています。兄はそこそこ有名な私立大学にやっとのことで入学し、10年くらいかけて司法試験に合格しました。

私は幼い頃から兄より成績優秀でした。しかし、我が家の家訓は「女は男を立てなければならない」。したがって、なかなか大学にさえ受からない兄を差し置いて、私が大学を受験することは許されず、まして司法試験など受ける資格はありませんでした。

「妹がお兄ちゃんより優秀だったら、お兄ちゃん傷つくでしょ」

母はいつも私にそう言って、勉強より家事やお洒落に力を注ぐことを勧めました。

この家の女性たちは職業選択の自由と引きかえに、働かなくても生きていける特権を与えられるのです。