仕事のアウトプットの量にも直結
本を読むことの意義は、その情報の「質」にある。新聞やテレビ、ネットが扱う情報の多くは一時的な「フロー情報」だが、書籍に記載されているのは、扱う対象の歴史や過去、分析を含めた「ストック情報」だからだ。
「情報化がますます進む現在、ネットニュースなどのフロー情報にたくさん触れていても、物事の『本質』をつかむ力は育まれませんし、他人と差別化もできません。昨今の国際情勢や経済問題を理解し、これから伸びるビジネスを見通すうえでも、読書によって培った自分の中の情報選択の基準とモノサシが役立つのです」
フォトリーディングで得たインプットは、仕事のアウトプットの量にも直結する。久保田教授にとってアウトプットとは、端的に言うと執筆量だ。
「完璧な書評」を2日で書き上げた!
久保田教授は、先日プレジデント編集部から書評執筆の打診を受けた。締め切りまでわずか2日という、滅多にない急ぎの案件だ。それでも、「あれとあれなら書評してみたいなという本が職場の本棚にあったので、『お受けします。どの本がいいですか?』と返事しました」。
といっても、その時点ではまだ目次をざっと確かめてあっただけ。しかし久保田教授の場合、フォトリーディングを使えば1時間で読了できる。すぐに読み終え、要点を整理し、翌日午前中には1時間ほどで「完璧な書評」(担当編集者M氏)を書き上げてしまった。そのスピードには、ライターとして舌を巻くしかない。
陸前高田時代には、地元事情に通じているわけではないのに、被災地を訪れる大臣や報道関係者を案内する機会が多かった。その際も、事前に多くの地元に関する資料をフォトリーディングを使って短時間で読み込むことで、的確に対応することができたという。
「フォトリーディングとは、単に本を速く読む技術であるだけでなく、応用すれば『物事の本質を圧倒的に速くつかむ力』を育むことができます。その力は、仕事に役立つのはもちろん、語学などの勉強や、趣味の向上などにも生かせるはずです。気負わずに『スマホにすごく便利なアプリを入れる』ぐらいの気分で、ぜひ取り組んでみてください」
●架空のみかんを思い浮かべる
●架空のみかんを食べてみる
●新しい架空のみかんをイメージする
●新しいみかんを後頭部の斜め上15~20cmへ置く
●みかんの場所へ意識を集中し、リラックスする
山口佐貴子『才能が目覚めるフォトリーディング速読術』から再編集
1976年、静岡県生まれ。京都大学を卒業後、内閣府入り。英ケンブリッジ大学経営学修士、英ヨーク大学政治学修士。2011年から15年まで岩手県陸前高田市副市長を務める。16年4月から現職。著書に『官僚に学ぶ読書術』など。