産経は書き出しのひねりが弱いぞ

ところで読売以外の新聞社説で、この憲法改正や安保法の容認反故の動きについて大きく扱っているのが、読売社説と同じ10月28日付の産経新聞の社説である(産経の場合は「赤旗」と同じ「主張」というカットで社説を掲載している)。

「希望の党」というタイトルを付け、「民進回帰では不毛すぎる」と一見、きつい見出しを取っている。

その書き出しも「選挙が終わったとたん先祖返りをして『第2民進党』になろうとでもいうのだろうか」と皮肉ってはいるものの、ひねり方が弱い。

産経社説はその序盤をこう書き進める。

「希望の党が両院議員総会を開いた。そこで安全保障関連法への姿勢について、同法の廃止を求めてきた『民進党の考え方と矛盾しない』という見解を確認した」

「『泥舟』を捨てて新党になだれ込もうとした際とは、ずいぶん話が違う」

「北朝鮮危機を目の当たりにしながら、国の守りに関する基本的な立場をころころ変える。出だしから有権者への重大な背信を犯す党を信頼することはできない」

「小池氏が正しい」とズバリ書けない産経

まず、「安全保障関連法への姿勢について、同法の廃止を求めてきた『民進党の考え方と矛盾しない』という見解」という書き方自体が分かりにくい。

なぜ、読売社説のように「安保法に対する容認の反故」とはっきり書けないのか。この社説を書いた論説委員の筆力を疑ってしまう。

次の「泥舟」うんぬんはいいが、いきなり北朝鮮の脅威を持ってくるのはどうか。北朝鮮問題に力を注いできた産経らしいのだが、そこを誇張することにもなる。沙鴎一歩には、どこか嫌みな感じする。

「有権者への重大な背信を犯す党を信頼することはできない」という表現も、なぜ「有権者への重大な背信だ」と明確に書けないのだろうか。

産経社説は次にこう論じていく。

「院選で、小池百合子代表は立候補者との間で政策協定を結んだ。そこには、安保関連法について『憲法に則り適切に運用する』とうたっていた」

「集団的自衛権の行使容認への態度をぼかすという問題点はあった。それでも、行使容認を違憲と決めつけ、同法廃止を声高に求めてきた民進党よりは現実的な姿勢に転じるはずだった」

この辺りも分かりにくい。読売社説はズバリと「『将来、政権交代しても、外交・安保政策は継続させるべきだ』とする小池氏の認識は正しい」と書いているではないか。産経社説はどうしてそう書けないのか。