米国消費者を対象に行ったアンケート調査では、もう1つ、注目すべき点があった。それは日系メーカーに対する信頼の高さだ。消費者に「どの企業が自動運転車を出したら購入を検討するか」と質問したところ、1位と2位は日本と同じ日系の自動車メーカーだった(図表4)。

余談だが母国のメーカーより日系メーカーに対する信頼が高いことを知り、米調査チームはがっかりしていた。これは日系メーカーが長年にわたって品質に対する信頼を積み上げ、米国市場でのブランド力を高めてきた結果であり、大切にすべき財産だと言える。日系メーカーが自動運転車市場において成功するためには、この高いブランド力を戦略的に生かすことも重要になるであろう。

自動運転車は社会的コンセンサスを得られるか

完全自動運転機能の価格は当初1万ドルと高額になることが予想されるため、市場投入から普及までは時間がかかる。「誰が、どのような機能を、どのタイミングで求めるのか」の見極めは難しく、前半で触れた法的・倫理的な課題を超えていくためには、自動運転技術に対する信頼を高めると同時に、社会的なコンセンサスも得なくてはならない。

上記を考慮しながら、BCGが2015年に発表した自動運転車の普及予測は以下の通りである。

・2025年に世界における新車販売台数の12.4%、1390万台が部分自動運転車となる。
・上記のうち0.5%にあたる60万台は完全自動運転車になる。
・2035年に世界における新車販売台数の約25%、約3000万台が自動運転車となる。
・上記のうち約10%にあたる1200万台は完全自動運転車になる(図表5)。

自動車産業はすそ野が広い。自動運転車の普及は自動車産業のみならず、IT企業、物流・タクシー業界、そして損害会社にまで大きな影響を与えることになるだろ。

古宮 聡(こみや・さとし)
ボストン コンサルティング グループ(BCG) シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。BCG産業財・自動車グループ アジア・パシフィック地区リーダー、BCG自動車セクター アジア・パシフィック地区リーダー兼日本リーダー。自動車メーカー、自動車部品メーカーなどを含む産業財企業に対して、事業戦略、グローバル戦略の策定・実行支援、デジタル・トランスフォーメーション、オペレーション改革、コスト削減、収益力強化、営業改革などのプロジェクトを手掛けている。【BCG自動車セクターサイト】https://www.bcg.com/ja-jp/industries/automotive/default.aspx
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