米国の消費者は自動運転機能に5000ドル支払う

では、消費者は自動運転機能にいくら支払ってもいいと考えているだろうか。日米ではそれぞれ特色のある結果が出た。

BCGが2014年に1500人以上の米国消費者を対象に行ったアンケート調査によると、自動運転に興味のある消費者のうち、自動運転機能に対し、車輌本体価格に上乗せして支払ってもいいという消費者は5割を超えていた。この支払い意向のある消費者のうち、5000ドル(約60万円)以上を完全自動運転機能に対して支払う意向のある消費者は約30%に上る。60万円近くの金額を払っても購入したい付加価値のある商品はめったにない。これには私たちも驚き、なぜそんなに支払う気持ちになるのかを個別にインタビューを実施した(図表2)。

ある回答者は、郊外にある自宅からボストンのオフィスまで自動運転車で通勤した場合、まずオフィス側の駐車場代が安くなるか、不要になるだろう、と語った。なぜならば「自分を送り届けてくれた後、自動運転で郊外まで戻り、どこかに駐車してくれるだろうから」と。

また、別の回答者はこんな話をした。現在はボストンにある職場の近くに住み、電車で通勤している。しかし、自動運転車が手に入れば往復が楽になるため、今より遠くに住める。「郊外に住めば家賃が安くなるため、60万円上乗せしても割にあうはずだ」と。

インタビューした限り、米国の消費者はかなり具体的かつ真剣に、自動運転車の購入を考えていると感じた。

米国人に比べ日本人の財布の紐はかたい

BCGでは同じ調査を日本の消費者約1500名を対象に、2015年に実施した。自動運転に対する興味は日米ともに高かったものの、支払ってもいいとする金額には大きな差が見られた。

日本の場合、自動運転車に興味を持つ消費者の5~8割が自動運転の機能に対する上乗せ額を支払ってもいいと答え、「高速道路での自動運転」「特定ルートでの自動運転」「渋滞時の自動運転」「自動バレー・パーキング」の4つの機能のうち、1つの機能にかける予算が10万円までという回答が6~7割、4つの機能すべてを搭載した場合にかける予算は20万円までとの回答が6割という結果になった(図表3)。

自動運転車に関して言うと、日本の消費者は米国の消費者に比べて財布のひもがかたい。そもそも自動車にかける金額が日米で違いがあり、日本の方が金額が少ない点を考慮して考える必要はあるものの、このことは自動運転にかかる研究開発コストを日本市場で回収することの難しさを示していると言える。