イノベーション産業が集積するイノベーションシティでは、乗数効果で次々と雇用が生まれ、当然、賃金も上がる。ゆえにますます人や企業が集まって繁栄するという好循環になっている。

ちなみに今、世界でもっともイノベーションシティとして様になっているのがシアトルだろう。アマゾンやマイクロソフトを筆頭に数々のイノベーション企業が本拠を置き、スターバックス、コストコ、ノードストローム、エクスペディアなど多彩な企業もシアトルに本社を構えていて、すさまじい乗数効果を発揮している。シアトルはコンパクトな町並みに豊かな自然も残っていて、仕事環境と生活環境が両立している。

そうした「職住近接」のライフスタイルも評判を呼んで、世界中からシアトルに人が集まってくるのだ。その北隣のバンクーバーも同じような環境で、映画、ゲームなどの産業基盤を整えて、今や「北のシリコンバレー」と呼ばれるほど。トランプ大統領の移民排斥思想の恩恵もあって頭脳労働者の集積場所として変貌してきている。

働く場所、飲む場所、住む場所がバラバラだ

外資を呼び込む2つ目の神器は「パートナーの仕事」。パートナーを日本に連れてきても、パートナーにやることがないと長続きしない。言葉も通じない異国にきて家の中で独りじっとしていたら、精神的に参ってくる。仕事でもいいし、ボランティアなどのコミュニティ活動でもいい。時間を持て余さないことが大事で、関西では神戸が外国人のコミュニティが多い。神器の3つ目と4つ目は、「子供の学校」と「教会」で、神戸はインターナショナルスクールも教会も充実している。

外資を誘致する4種の神器から見ても、大阪はすべてにおいて足りない。最たるものは「職住近接」で、大阪の経営者というのは昼間は町中で仕事をして、夜は北新地で飲んで、芦屋か夙川か生駒辺りの家に帰る。町中に住んでいるのは転勤族のビジネスマンと役人くらいのものだ。大阪は世界でも珍しいメガシティで、梅田を中心とした北の商圏は米シカゴに負けない規模なのに、町中には要人が住んでいないのだ。

大阪を職住近接の町にしようと思えば、できないことはない。候補地は2つある。1つは大阪城公園周辺。あの辺りは大阪で唯一緑が多いし、夜景も素晴らしい。ニューヨークで言えば高級マンションが立ち並ぶセントラルパークに匹敵する素材で、開発ができれば超一流の住宅地になる。