もう1つは御堂筋の両側。船場や道修町といった問屋街は今やすっかり寂れて閑古鳥が鳴いているが、あそこは大阪を南北に貫くメーンストリートだ。御堂筋に沿って地下鉄が走っているから梅田に出るにも新大阪に行くにも非常に便がいい。東京で言えば千代田区の番町や港区レベルの超一流の住宅街になる可能性を秘めている。

産業構造を変える方法は2つしかない

もともと御堂筋は建物の高さ制限や商業利用などの規制に縛られていて、徐々に緩和されてきた。御堂筋に事務所物件など人が集まらないのだから、思い切って縛りを取り払って居住用の高層マンションを建てられるようにする。あるいは上階が居住用の複合ビルをつくれるようにすれば、職住近接の高級住宅街に生まれ変わる。気合を入れて町づくりに取り組めば、大阪はもっと栄える。併せて産業構造を変えてイノベーションシティへの脱皮を目指すべきだ。

産業構造を変える方法は2つしかない。1つは自分たちでつくる。だが、これは時間もコストも根気も要る。伝統的な製造業が幅を利かせる大阪で、新しい産業を興そうという構想はなかなか出にくい。すると方法は1つ。前述のように外から乗数効果の高い企業を呼び込むのだ。

たとえばシアトルに本社を置く企業で、シアトル出身の経営者はマイクロソフトを創業したビル・ゲイツとポール・アレンぐらいしかいない。スターバックスのCEOハワード・シュルツはシアトルが故郷のような顔をしているがニューヨーク・ブルックリンの出身。アマゾンを創業したジェフ・ベゾスはニューメキシコ州のアルバカーキ出身だが、今やアマゾンはシアトルの地形を変える勢いで発展している。大型百貨店のノードストロームの創業者はスウェーデンからの移民だ。シアトルはボーイングが本社をシカゴに移した後は、よそ者に街の繁栄をつくり出してもらっている。

大阪がイノベーションシティを目指すなら、やはりよそ者にきてもらうしかない。よそ者が「自分はここで世界に打って出る会社をつくりたい」「ここに住みたい」と思うような条件を整える必要がある。さらに言えば、よそからきた人たちが繁栄するのを歓迎するような雰囲気を醸成して、法律と条令を整備することが大切だろう。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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