域外適用に積極的な米国と英国
この条約の締約国は外国公務員に対する贈賄等を禁止する国内法を制定しており、特に米国では連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)に基づき、日本企業を含む多くの海外企業が摘発され、巨額な罰金を課されるケースが数多く存在します。また、英国の2010年贈収賄法(UK Bribery Act 2010)では、私人間の贈収賄も処罰対象とする等、現状では世界で最も厳しい汚職行為に関する法令となっています。
この米国FCPA、英国UKBAでは積極的に域外適用がなされています。その対象範囲も広く、一般的には米国、英国の企業に影響を与えていないと思われるようなことも対象となります。例えば、ある会社がアフリカのある国で公務員に贈賄をしたとします。この会社は米国に拠点もなく、営業もしていませんでした。その場合、米国のFCPAの適用は受けないと思われがちですが、全く違います。
もし、贈賄行為に、その会社の米国人従業員が関与していた場合や、贈賄が米ドルで行われた場合も域外適用を受けるのです。このような事例が実際に多くあります。つまり、アフリカのある国での贈賄行為が、米国FCPAの適用を受け、巨額の課徴金を課せられることにつながるのです。このようなことを日本企業は肝に銘じる必要があります。
一方、日本の当局の摘発は少ないのが実情です。OECD は公式サイトで日本の当局の対応について、下記のように指摘しています。
「日本では不正競争防止法が1999年に改正され、国際事業で優位性獲得を目的とした外国公務員への贈賄が違法となったものの、同年以降に「外国公務員贈賄」で起訴されたケースはわずか4件に過ぎません。贈賄作業部会は、贈賄作業部会は、OECD 贈賄防止条約で要求されているように、外国公務員への贈賄で有罪となった企業や個人が不正収益をロンダリング(洗浄)などの手口で保有できないようにするため、日本に対しては組織的犯罪処罰法(AOCL)の改正を繰り返し要請してきました。また、日本企業による外国公務員贈賄を摘発、捜査、起訴できるように、警察と検察のリソースの組織化を図る行動計画の策定を提言しました。OECDの高官級ミッション団は2016年6月29日から30日まで東京を訪問し、これら急を要する課題について外務省、経済産業省、法務省、警察庁および国税庁の高官らと協議しました。」