権力への「追及」には大賛成だが……
さらに「また森友問題では、首相の妻・昭恵氏の国会招致について『私が代わって十分に説明している』と引き続き拒否する考えを示した」とも書き、こう指摘する。
「『丁寧に説明する努力を積み重ねたい』という首相の約束はどこへ行ってしまったのか。これでは国民の不信感が消えるはずがない。こうした首相の姿勢も含め、引き続き衆院選の焦点となるだろう」
8日の討論会でも毎日新聞の専門編集委員は追及の手を緩めることなく、安倍首相の疑惑に迫った。権力に対する新聞記者の追及は当然な行為であり、取材の原点でもある。この沙鴎一歩も大賛成である。
かつてのロッキード事件やリクルート事件でも、記者会見場は鋭い質問が次々と飛び交い、疑惑を解明して国民の前にさらけ出してやりたいという記者たちの熱気が渦巻いていたものである。
続けて毎日社説は北朝鮮問題もお得意の論調を展開する。
「首相は北朝鮮問題を挙げて『国難突破解散』だと言う。討論会では今後、北朝鮮情勢はさらに緊迫するとの見方を示した。今のうちに衆院選を行い、国民の信を得て乗り切りたいとの考えかもしれない」
「だが、そうした情勢分析をしているのなら、まず国会できちんと説明するのが筋だ。説明もなく『国難』と不安をあおって選挙に臨むというのは、やはり順番が逆だ」
「首相が気色ばんで朝日を批判した」
毎日新聞は前述の社説が掲載された9日付紙面の2面で、こんな選挙企画の記事を載せている。
冒頭が「『ぜひ国民の皆さんに、新聞をよくファクトチェックしていただきたい』」で、見出しは「気色ばむ首相 朝日批判」「加計問題で応酬」だ。
記事は「8日の党首討論会では、安倍晋三首相が衆院解散の判断に至った要因の一つとされる森友学園・加計学園の問題も取り上げられ、首相が気色ばんで朝日新聞を批判する場面があった」と書いた後、こう説明していく。
「きっかけは日本記者クラブの企画委員の質問。加計問題での首相の説明が『不十分』とする回答が79%を占めた朝日新聞の調査に触れた。応答で首相は7月10日の加計問題に関する国会の閉会中審査に言及。参考人で出席した加戸守行・前愛媛県知事の発言を『次の日に全く(朝日が報道)していない』と続け、『胸を張ってしていると言えますか』と聞いた。『はい、できます』と応じられると、首相が『チェック』を呼びかけた」
毎日のように書き進めると、安倍首相がかなり攻撃的になっていたような印象を受ける。しかし沙鴎一歩が見たところ、朝日の論説委員の質問とそれに対す受け答えで安倍首相が「気色ばんでいた」ようには見えなかった。安倍首相は時々、笑顔も見せながら余裕を持って答えていた。
決して安倍首相の肩を持つわけではない。朝日の論説委員に限らず、質問する記者側が、かなり横柄な態度だった。そこが残念でならないのである。