孤立主義の危険性をやっと認識したか

さらに米国第1主義について「演説で『各国の指導者も自国を第一に考えるべきだ』と主張したのは、『米国第1』主義に基づく自由貿易への反対や移民政策を正当化しようとしたのだろう」と批判する。

「同時に、『より安全で平和な未来』に向けて各国が協力する必要性にも言及し、国連などの国際協調主義に対する配慮を見せた」と書き、「北朝鮮問題やイスラム過激派によるテロ、シリア内戦などに効果的に取り組むには、多国間協力が欠かせない。米国単独で対応することも、孤立主義に走って放置することもできない現実をようやく理解し始めたのではないか」と分析しながら皮肉る。

そのテクニックに「お見事」と思わず手をたたきたくなる。手慣れた論説委員が筆を執ったのだろう。

最後は「トランプ氏が重視するとした各国の『主権』『安全』『繁栄』は、米国主導の世界秩序が支えている。重い責任を踏まえた外交安保戦略を構築してもらいたい」とトランプ氏に「米国主導の世界秩序」の重要性を悟らせ、読売が好きな外交と安保で締めくくる。

産経は「核戦争」の危険性を考えているのか

最後に21日付の産経新聞の社説(主張)を取り上げる。全面的にトランプ演説を支持する産経社説は、「拉致」と「演説」の2つのテーマに分けて主張している。実質的は大きな1本社説である。

産経社説はその書き出しで「北朝鮮の核・ミサイル戦力を世界全体への脅威と位置づけ、世界をリードする意思を表明したことを歓迎したい」と大きく評価し、「注目されたトランプ米大統領の初の国連演説は、自国や同盟国を守るためには相手を『完全に破壊』するという、強力な警告を発する舞台ともなった」と指摘する。

極めつけは次の表現だ。

「武力行使という選択肢をトランプ政権は堅持してきた。だが、国連総会で直接、大統領が発言したことの意味は重い」と書き、トランプ氏や世界各国に対し「圧力を高める具体的な行動をとってもらいたい。日米韓が結束するのをはじめ、世界各国に働きかけていくことが求められる」と注文する。

トランプ氏の武力行使を肯定し、それを世界で認め合い、他国も武力行使を行うべきだ、という主張である。産経社説は「目には目を」という発想でしか北朝鮮を封じ込められないと信じているように読める。産経新聞の論説委員たちは、武力行使がエスカレートし、核戦争に発展する危険性をどう考えているのか。

論説委員全員が武力行使を肯定するわけではないだろうが、武力行使に反対する論説委員が少ないのだろう。残念で悲しいことである。

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