一方、フィリピン沖で発生し、フィリピン、台湾を経て、中国本土向かう台風も約半分あります。古来、中国では「治水」と言って水を治めることは、各王朝にとって内政の一大事でした。いまの中国政府も洪水対策に力を入れていますが、それでも洪水が発生しているというのが実態です。中国では内陸部から沿岸部に急速に人が移動したため、洪水対策が追い付いていないのです。

日本も台風のリスクは高いですが、実は中国も高い。フィリピン、台湾も非常に高いリスクにさらされています。台風の進路は普通は南寄りの進路をとったとしても、中国の広州あたりが最も南なのですが、たまにそれてベトナムのあたりに向かうことがあります。そうするとあまり台風に慣れていないので、小さな台風でも大きな影響が出ることもあります。

このように東アジア・東南アジアでは、自然災害とくに洪水が増えているということを認識していただきたいと思います。

その土地の履歴を調べることが大切

では、台風などへの備えはどうすればいいのでしょうか。台風は地震と違ってある程度進路を予測できるので、対策が採りやすいとも言えます。ただし、予測がしやすいからと言って準備を怠ると、非常に大きな被害が出てしまいます。地震や新興感染症に対してはBCP(事業継続計画)を策定している企業は多いのですが、台風を想定したBCP策定している企業は多くありません。

ですから、対応策としては事前にBCPを策定し、台風の接近は予報で分かるので、人、設備、取引先の順に安全策を講じ、台風が去った後はBCPに沿って動くことが基本となります。

工業団地に進出するときには、その土地の来歴を調べることも大切です。バンコクの大洪水は100年に一度と言われましたが、調べてみると20~30年に一度大洪水起こっていたのです。上流にダムができたため、もう大丈夫と思われていたのですが、大雨に耐えきれずダムが放水したことが、大洪水を招きました。この洪水では7つある主要な工業団地すべてが冠水しました。ある日本企業に聞いたところ「すべての団地に日本を代表する企業が進出していたので、安心していた」と。

現在、7つの工業団地は高さ2メートルの堤防で囲まれ、日本企業は盛り土もしています。ただ、工業団地は守られたとしても、周辺の幹線道路が冠水する状況は変わっておらず、洪水になれば物流が途絶えてしまうリスクは残ったままです。

台風などの自然災害の影響を軽減するために、企業が確認すべきポイントを表1にまとめてあるので、ぜひ活用していただきたいと思います。