温暖化の進行で「気候変調」の恐れ

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2013年の夏は「極端な天候」だった

地球温暖化のシグナルとしてすでに見えつつあるのは、海が暖まり、大気中の水蒸気量が増えつつあることです。これによって、熱帯域では積乱雲がさらに発達しますが、降雨に伴う上空での凝結熱の放出によってその周辺域では大気が安定してしまうため、台風の発生数が減るのではと予想されています。しかし、一旦何かのきっかけで上昇気流が起きると、暖かい海上に溜まった水蒸気により一気に積乱雲が発達し、とんでもない豪雨を降らせる可能性があります。予測に使用する気候モデルによる不確実性はありますが、強い積乱雲の集団が台風として組織化されれば現在より一層より強力になる可能性があります。

また温暖化では海水が膨張し、水位が上がります。そこに巨大な台風による吸い上げ効果、吹き寄せ効果が重なると、2013年11月にフィリピンのレイテ島を襲ったような高潮災害が発生するリスクが高まります。日本では東京や大阪、名古屋などの大都市にゼロメートル地帯があり、高潮に豪雨が重なれば深刻な害水となる恐れがあります。

さらに時間雨量100ミリクラスの豪雨が、東北や北海道でも観測され始めていることも気になります。道路や河川、鉄道といったインフラは過去の災害を想定しているため、その土地でこれまで体験したことのないような雨には対応しておらず、大きな災害へとつながるからです。

温暖化の時代にはあらゆる場所でのリスクが総じて高まります。よって、「いままでなかったから大丈夫」という考え方は非常に危険です。行政のインフラ整備や防災の仕組み、住民の災害に対する意識も含め、今後は「起きなかったことが起きるようになる」という認識が必要です。

その意味では13年9月に本州に上陸した台風18号は、これまでにない台風でした。一般的に台風は日本列島へ接近するにつれて勢力を弱めますが、この台風は逆に勢力をより強めたからです。