EVの欠点を「発電用エンジン」でクリアする
【安井】なぜですか。
【清水】BMWのi3は発電用にどういうエンジンを使っているかと言うと、自社のエンジンではないのです。要するに発電用に使うエンジンは安くなきゃいけない。でもBMWのエンジンを使ったら高くなっちゃう。それでスウェーデンのハスクバーナーというオートバイメーカーを買収し、そのエンジンを使ってi3のレンジエクステンダーにしているんです。EVとして走っている時に、電池が切れそうなのに充電ポイントがないような事態になっても、このエンジンで発電すれば航続距離が長くなるという仕組みです。入っている燃料は10リッターとか、12リッターなのでエンジンは小さいほどいい。その仕組みに一番ふさわしいのはロータリーエンジンで、とても小さくて振動があまりないのがいいのです。
【安井】今のEVの欠点を小さな発電用のエンジンを載せてクリアしようとする考え方ですね。
【清水】バッテリーEVはやはり実用面では限界がある。航続距離や充電時間の問題とかがある。BMWのi3を見ると、売れているのは発電用のエンジンがオプションで載っているレンジエクステンダー型のバッテリーEVなんです。
【安井】モーターと電池だけのEVが市場を席巻するとは限らないと見ているのですか。
【清水】今のクルマは1グラム当たり1円という価格で、1つの燃料タンクで1000キロ近く走っている。この価値を超えるか、ほぼ同等の価値を持つ乗り物を作らない限り、限定的なEVと言われてしまうでしょう。EVが本当に普及するには利用者の使い勝手も良くしなければいけない。その現実的な解決策がレンジエクステンダー型のEVだと思います。
電源コンセントはなく、給油口しかない
【安井】日産の「ノートe-POWER」がすごく売れているのも、電気自動車っぽく走れるけれど、大きなエンジンで発電するハイブリッドだからでしょう。電源コンセントはなく、給油口しかない。
【清水】シリーズハイブリッドなので、あれは売れるんです。「充電しないEVです」と言ったから売れたのです。
【安井】ロータリーエンジンを使えばもっと効率がいいものが作れるということですか。
【清水】しかも静かです。僕はそう思っていますけどね。だから多様な電動化を進めようとしているトヨタはマツダのいいものをどうやって使うかが課題なのです。マツダをトヨタが単に助けたんのではなくて、トヨタはマツダとの提携で、もっと面白いクルマをマツダのユニークな技術を使えば、作れるだろうと考えているに違いないと思います。