究極は、相手に話してもらうこと

ノートにメモをとるのは、関心の幅を広げる訓練であり、自分の頭に入れるための手段と考えてください。つまり、自分にとって使える情報にするということです。人間は一度頭に入れたことでも忘れてしまいます。ですから、ノートを時々見返すのが効果的です。

「では、新聞の切り抜きをスクラップしてはどうか」と考える人もいるかもしれません。膨大な外部データベースをコンパクトにまとめるという意味では有効です。しかし、それはあくまで外部データベースにすぎません。ややもすると、スクラップすることが目的となりがちです。雑談力を高めるには、自分の頭の中の内部データベースに収めることが重要です。

雑談力アップのための2番目「基礎的な知識」は、たとえば「バランスシートとは?」「名目GDPと実質GDPの違いは?」など、経済入門書などで得られる知識のことです。これは一度身につければ一生ものです。逆にこの知識がなければ、基本的な情報を正確に理解することもできませんし、雑談力の幅も広がりません。

タクシー運転手との会話で雑談力を鍛える

3番目の「思考力」を身につけるのは、一朝一夕では難しいことです。自分にとって「少し難しい」と感じる本や解説記事を、論理レベルを上げることを意識しながら、じっくりと深く読み込むことで鍛えられます。たとえば平日の日経新聞に掲載される「経済教室」。一流の先生方がわかりやすく書いていますから、表面だけなぞるのは簡単です。でも内容の密度が濃いだけに、それをきちんと理解するにはそれなりの時間が必要となるはずです。基本的な情報と基礎的な知識も得られますので、活用しない手はありません。

基本的な情報、基礎的な知識、思考力が備われば、雑談力は飛躍的にアップするでしょう。ただし、それを実践に移すとなると、もう少し注意しなければならないポイントがあります。

それは、相手が興味を持っていること、相手がほしがっている情報について話をすることです。究極は、相手が話したがっていることを、気持ちよく話してもらうこと。それを引き出すのに有効なのが雑談力なのです。

タクシーの運転手さんとの会話で雑談力を鍛えるのも一つの方法。「前の職業がなんだったか」まで聞き出せれば、腕前が上がったと思っていいでしょう。