「売れない」という決めつけを取り除く

ずいぶんと勢いを感じる黒ラベルだが、ほんの3年前までは「黒ラベルはそれほど売れるブランドではない」と近畿エリアの社員の誰もが思い込んでいた。03年に入社し東北で約4年間過ごした後、近畿圏本部に異動になった田邊さんも同じ思いだった。

「スーパーマーケットを担当していると、黒ラベルは自社のヱビスよりも売れていなかったので、さほど売れるブランドではないのだと勝手に決めつけていました」

ところがその5年後、営業に加えてマーケティングの仕事も始めるようになって驚くべきデータに出合う。スーパーでこそヱビスのほうが売れていたものの、コンビニエンスストアではヱビスの1.9倍、酒量販店では1.2倍売れていたのだ。

取材場所になった「パーフェクトビヤガーデン」を運営するニューミュンヘンの上杉竜太郎専務

「これが黒ラベルの本来の姿で、取り組みさえすれば必ず売れると思いました。でも、にわかには信じられないことなので、まずは営業担当者全員を巻き込んで、全体会議、エリア戦略会議、全体会議と繰り返し討議しました」

最初に手がけたのが社内の意識改革。

「売れない」という決めつけを取り除くのだ。黒ラベルを知るためのネタ本づくり、黒ラベルのジャンパーづくり、それと黒ラベルの売り上げを全員に人事考課の評価項目として義務付けた。

「ジャンパーのロゴは若手の営業担当者に作ってもらい、私たちだけでなくお得意様にも配りました。評価項目は通常は会社が設定した項目を挙げるのですが、初めて全員が黒ラベルを項目に入れたので、これはチャレンジでした」

社内で黒ラベルを売る機運を盛り上げながら、得意先にもアプローチ。積極的にバイヤーサンプリングを行った。毎回、商談のときに黒ラベルを持参し、「ご自宅で飲んでください」と渡した。

「しつこいほど黒ラベルを持っていきました(笑)。新商品のサンプリングを持参することはありますが、既存商品を毎回持っていくのは異例ですね」