「QSC」実現には細部にこだわる

1954年に「マクドナルド」の店に出合うまで、ミルクセーキ用のミキサーを売るセールスマンだったクロックは、最初はミキサーの販売拡大先として興味を持ちました。やがて「マクドナルド」のシステムこそが成功への道だと考え直します。驚くのは、全米に展開するために欠かせないのは、今でいう「QSC」だと喝破したことです。

当時のマクドナルドハンバーガー。(C)2016 SPEEDEE DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「QSC」とは、Quality=品質、Service=サービス、Cleanliness=清潔・清掃の頭文字で、飲食業にとって最も大切な3大要素といわれます。1950年代は米国でも「商品の品質と接客はよいが、店が汚い」(QとSはよいがCがダメ)や、「商品はよく、店も清潔だが、接客態度が悪い」(QとCはよいがSがダメ)といった不完全な店が多かったのです。

1955年4月に開業したクロックにとっての1号店「デスプレーンズ」店(米国イリノイ州シカゴ郊外)は、自伝では「他店のモデルにするべく必死の苦労を重ね、スムーズにいくようになるまで1年を要した」と述懐しています。

初日から売り上げは好調だったようですが、看板メニューである「マクドナルド製法のフライドポテト」がうまく揚がりません。調理工程は間違っておらず、マクドナルド兄弟にも電話で問い合わせたが原因はわからず。さらにはポテト&オニオン協会にも問い合わせます。製法を確認するうちに、原料のジャガイモの保存方法が、米国西海岸(マクドナルド兄弟の店)方式だと、中西部(クロックの1号店)の気候では再現できないことに気づき、乾燥の仕方を変えます。フライドポテトの「Q」の部分に徹底してこだわっていたのです。

また、「S」と「C」でも同様でした。映画では、地元の社交クラブの仲間にFC店運営を持ちかけた後、いい加減な店舗運営をする彼らに激怒する場面がありました。「店が汚い」「勝手に違う商品を売るな」と意識改革を迫っています。

一連の言動だけみると、いわゆる「マイクロマネジメント」のように思えます。「経営者はそこまで細かいことを言うな」という文脈で使われることも多い言葉ですが、「QSC」の実現という細部に魂を込める場面では、徹底してマイクロマネジメントをしていたのです。