長年連れ添った夫婦にも特例あり

最後に紹介するのが、長年連れ添った夫婦の間で贈与をする場合に受けられる配偶者控除である。これは、婚姻期間が20年以上の配偶者から居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を取得したときに、贈与税の課税価格から2000万円を控除するもので、俗に「おしどり贈与」と呼ばれる。

要件は、取得翌年の3月15日までにその不動産に住んでいて、かつ、その後も引き続き住む見込みであることである。特に、贈与された自宅をすぐに売却すると、特例の適用が受けられないので注意が必要である。居住用不動産とは、国内にある専ら居住の用に供する土地、借地権、家屋だ。店舗併用住宅や、その敷地として使われている土地の贈与が行われるときは、居住用の部分だけが対象になる。ただし、居住用部分の面積が全体のおおむね90%以上であれば、その不動産のすべてを居住用不動産とすることができる。

配偶者控除と暦年贈与を併せれば、最大2110万円まで贈与税がかからない。また、同じ配偶者からの贈与でこの控除を使うことができるのは、1回のみである。

贈与があってから3年以内に贈与者が亡くなった場合、暦年贈与では、贈与者である被相続人の相続財産に、贈与財産の価額を加算しなければならない。しかし、住宅資金、教育資金、結婚・子育て資金の特例で非課税の適用を受けた金額、また配偶者控除によるその控除額に相当する金額は、加算しなくともよいことになっている。そのため、被相続人となる者の意思能力にもよるが、亡くなる前であっても、これらの特例を使って贈与を行うことで、相続財産を縮小できる場合がある。

以上、ふれてきた特例は、配偶者控除を除いて、いずれも時限的なものであるから、その恩恵にあずかるため、被相続人となる者の資産状況を分析して、ふさわしいものを取り入れていきたい。

藤宮 浩
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。フジ総合グループ(https://fuji-sogo.com/
 
高原 誠
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員
東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。
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