いまラジオがおもしろい。2010年から始まった「ラジコ(radiko)」では、パソコンやスマホから登録不要かつ無料でラジオを聴けるようになった。さらに2016年からはお勧めしたい時点の音声をシェアできる仕組みを追加。いわば一番おもしろい「大トロ」の音声を無料で配る試みだ。なぜラジオ業界はネットでの発信に力を入れているのか。株式会社radiko代表取締役社長・青木貴博氏に聞いた。

――2016年10月から、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことができる「タイムフリー聴取機能」が搭載されました。半年以上たちましたが、現在までに、どのくらい利用されているのでしょうか?

【青木】開始直後の10月は、1カ月で150万人の方に利用していただきました。それからも順調に伸び、最新の数字だと利用者は月240万人ほどになっています。テレビは録画が主流ですが、ラジオは昔のような録音(オンエアチェック)という文化が一般的には薄れつつあるため、タイムフリー機能によってリスナーの利便性が向上したのではないかと思っています。

――ユーザーからはどんなリアクションがありましたか? いちユーザーとしては、タイムフリーで聴けるのが「過去1週間以内」で「聴取可能時間は3時間」という制限は、少し使いづらいように感じているのですが。

【青木】定期的にユーザーアンケートを行っていますが、「過去1週間以内に放送された番組」という期限については、短いという意見はほとんどありません。ただ、聴取可能時間が3時間という制限については、改善してほしいという意見はあります。

「ラジオはおじさんメディア」を払拭する

――同じタイミングで、URLを共有することでオススメの番組を聴いてほしい時点から聴いてもらえるシェア機能も実装されています。こちらの手応えはどうでしょう?

radikoのタイムフリー聴取画面

【青木】シェア機能実装の大前提として、若年層を取り込もうという考えがあります。若者はテレビを見なくなり、新聞も読まなくなっているのでラジオだけの問題ではないですが、その時間をどのようにラジオに向けさせるかが課題になっています。そう考えたとき、やはりSNSによる友達とのコミュニケーションが若者の生活の中心にあるので、そこに入っていかなければラジオを広めることができません。

SNSの利用時間は10代の平日で117.4分、20代の同じく平日で91.1分になっているそうです。そこでの会話に、ラジオの話題を入れてほしい。実際、実装後は月に5万回ほど、SNSやメールでシェアされています。友達から「このラジオ、おもしろいよ」と勧められれば、番宣以上に説得力があるかもしれない。そもそも、ラジオになじみが薄い若者は、番宣を聴きませんからね。

また、「ラジオはおじさんメディアでダサい」というイメージが一部にはあるため、そういう印象を払拭するのもラジコの役割のひとつだと思います。コンテンツとしては素晴らしい番組がたくさんあるので、特にラジオになじみが薄い層に、ラジオの魅力を知ってもらおうと、日々奮闘しているところです。

――では、ラジコユーザーの平均年齢は以前よりも下がったのでしょうか?

【青木】いえ、平均44.4歳で、以前よりも上がっています。2010年にローンチしたときは、平均40歳を切っていました。ユーザー数が増えて、若い層だけではなく、幅広い年齢層に対して徐々に浸透してきた証拠でしょう。もともとラジオに親和性が高い50代より上の層に、スマートフォンが普及したことが大きいと思います。