「理系の復権」でインドは有利
――インド系のIT企業が伸びている理由をどう分析しているか。
4、5年前から、「ビッグデータ」「データサイエンティスト」「デジタルトランスフォーメーション」といった言葉を耳にすることが増えた。これまで、ITを使った業務改革は、マッキンゼーやBCGといった「戦略コンサル」がトップにあり、その下がPwCやデロイトなどの「総合系コンサル」、その下にNTTデータなどの「ITコンサル」があるというピラミッド構造だった。起点はつねに戦略コンサルであり、いわば「文系」の考え方でできていた。
それに対して、この5年くらいは「理系」の考え方による業務改革が増えている。つまり新しい技術や研究成果を起点として、タスクが上がっていくようになっている。かつて理系の研究者はマーケットから乖離していると思われていたが、いまや統計分析や人工知能の研究者が人気を集めている。理系の発想でトレーダーやアナリストに転進する人も多い。
バンガロールに世界レベルの理系大学が集積しているように、インドの教育や研究の環境は非常に恵まれている。「理系の復権」に注目が集まるなかで、インド企業が伸びてくるのは当然だろう。
――ITベンダーとして、今の日本の環境をどう見るか。
人口が減るなかで、日本市場が今後大幅に成長するとは考えにくい。だが、技術主導によって競争の構図は変わるだろう。すでにアマゾンの「AWS」のようにサービスのクラウド化が進んでいる。大手銀行のシステム統合のような「何万人月規模」のプロジェクトはいまが最後で、受託請負開発だけの会社はもう生き残れない。そうした変化は2020年までに起きるはずだ。その時、先端的なスタートアップ企業や、インフォシスのようなアバンギャルドな外資系のIT企業が、市場シェアを大きく伸ばすことになるだろう。
インフォシスリミテッド日本代表 大西俊介
1962年生まれ。1986年一橋大学経済学部卒業、日本電信電話(NTT)に入社。NTTデータ、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て、2013年NTTデータ グローバルソリューションズ社長。2017年よりインフォシスリミテッド日本代表。