なぜ社員が「やらされ感」で仕事するのか。その原因は、ズバリ、組織や上司にあります。このように指摘すると、「自分はパワハラ上司じゃない。部下に強制したことはない」と反論する人もいるでしょう。しかし、やらされ感は、強制されたときにだけ生まれるものではありません。納得感のないまま仕事をしていたり、頭では必要だとわかっていても心がついてこないときにも生じます。部下を無理やり動かさなくても、上司の言動によって「やりたくないけど、仕方ないからやるか」と思わせてしまったとしたら、上司の責任です。
具体的に上司のどのような言動が部下のやる気をそぐのか。昔からよくあるのが、「根拠のない目標を押しつけられたとき」です。
一般的に、人は目標を持つことでやる気を高めます。目標は、必ずしも自発的なものである必要はありません。人から与えられた目標でも、なぜそこを目指すのかという理由に納得感とやりがいがあれば、その目標に向かって自分を駆り立てていくことができます。
根拠がない目標が「やらされ感」のもと
しかし、与えられた目標に納得感がないと、目標はやる気を促すどころか、逆にやらされ感を生む原因になります。そのことに気づかず、とにかく目標さえ与えればそこに向かって頑張ってくれると考えている上司が多いのです。
部下が目標に納得感を抱かないのは、どのようなケースでしょうか。 営業組織でいうと、数値目標は本来、市場予測に基づいて戦略的に設定すべきです。ところが、実際は「成長しないとマズいから、前年比で10%くらいにしておこうか」という感覚で目標設定してしまう会社が少なくありません。
予算を拒否することは現実的に困難なので、営業担当たちはひとまず了解します。しかし内心では、「こんな目標は達成できっこない。上は現場のことをわかっていない」と文句を言っているはずです。その結果、目標を目指すフリをしているが、適当に手を抜いているという状況が生まれます。
部下に与えた目標に本気で取り組んでもらいたければ、根拠に基づいて目標を設定して、きちんと説明することが大切です。予算は中間管理職よりもっと上の層が決めることが多いので、上司としても「上から降ってきたものをそのまま下におろしているだけ」と言いたくなるかもしれませんが、上からの指示をそのまま伝えるだけなら中間管理職の存在意義はありません。
なぜその予算になったのかという根拠を把握すべきです。同時に、現場からあがってきた実践的な予測を経営層に伝えて、ギャップを埋める努力をする。最終的に予算が変わらなかったとしても、上司がそうやって汗をかくことで、部下たちの納得感は増すはずです。