ここでのポイントは、ある期限(もしくは行うタイミング)と状態で、求める内容を明確に指示できているかどうか、である。

求める内容が明確な指示は、部下が忖度する時間をつくらないため、不必要な思考時間も発生しない。さらには、自分勝手な判断や思い込みで仕事を行うこともなくなる。

部下が認識できるレベルにする

ここで注意してほしいのは、「明確な指示」とは、一挙手一投足のやり方を細かく指示することではない、ということだ。そのような指示を行うと、部下は指示通り行うことで立ち止まり、指示待ちになってしまう。

例えば、「営業先に電話をかけなさい」という指示では、部下は「電話する」という行為をゴールと認識してしまう恐れがある。そうなった場合、「電話をかけたのですが、不在でした」という状態であっても、「指示を完了した」という認識となり、そこで行動が止まってしまう。ここでは、「○○さんとのアポイントをセットしなさい」と指示すれば、求める状態が明確になるため、「アポイントをセットする」というゴールに向かって行動を継続させることができる。

もし、「明確な指示をしているのに、うまくいかない」という悩みを抱えている場合には、部下が認識できるレベルの表現になっているかどうかを確認してほしい。

上司と部下には経験量・知識量に差がある。たとえば「富士山の山頂へ48時間以内に来い」という指示は、明確だが、登山の未経験者にとっては難易度すらイメージできない。この点を留意せず、上司の経験や知識に基づいた表現で指示を出してしまうと、それは結局「曖昧な指示」になってしまう。

「何年この仕事やってんだよ」「わかるだろ?」といったマネジメントは、不要なロスタイムを生み、組織の生産性を下げる。組織の生産性を高めるためには、「忖度」をなくして、指示を明確にすることが重要だ。

指示明確化のカギ

明確な指示とは、「忖度」の余地がないものだ。あいまいな指示では、自分勝手な判断や思い込みが発生してしまう。具体的は以下のような指示だ。

▼自分勝手な判断や思い込みが発生しやすい指示の例
整理整頓しなさい、なるべく早く10キロ走れ、離職率を低下させろ
→「不明確な期限+状態」となっている
▼自分勝手な判断や思い込みが発生しない指示の例
退社時机上ゼロ、10キロ60分で走れ、半年間の離職率を10%以下に下げろ
→「明確な期限+状態」となっている

「普通は」「常識的には」など「わかるだろ?」というあいまいな感覚にもとづくやり方を変えるだけでも、組織内のコミュニケーションは円滑になる。その結果、ロスタイムは最小化され、生産性が向上するはずだ。ぜひ試してみてほしい。

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