現場で業務を持ちながら、部下の管理も行うプレイングマネジャー。そこには「部下を育成しない上司」を生み出すという落とし穴があった。
なぜ、自分より“できない”あの人が上司なんだろう……
この時期、多くの会社では来年度の昇格人事が内示される。昨今では年功序列の壁を越えて、20代でも複数名の部下を持つ管理者として抜擢する企業も珍しくない。
いわゆる課長職やマネジャー職と言われる職制においては「プレイングマネジャー」として自ら業績達成のため現場の最前線に立ち、トッププレーヤーとしての模範たる責務を担うケースもある。
トッププレーヤーにそのまま業績を引っ張ってもらいながら部下の育成管理も任せられるとなれば、非常に生産性の高い組織づくりに役立つ。優秀な人材の確保が難しくなっている近年では、なおのこと少数精鋭で組織運営したいのが常である。
しかしながら、このプレイングマネジャーという職制は、運用を間違えると本来の目的をはたすどころか組織マネジメントにおいて致命的なロスをもたらす。今回はこの「プレイングマネジャーの弊害」について、考えてみたい。
「なぜ、あの人が上司なんだろう」といった会話は、おそらくどの組織でも繰り広げられているのではないだろうか。
営業力、技術力、リーダーとしての影響力、マーケットへの精通度……。部下はさまざまな“テーマ”で上司の力量を値踏みする。「営業力でいえば自分のほうが上ではないか」というように、テーマ毎に自分と上司を比較し、評価している。一方、上司もそれに対抗し、特定のテーマについて、個人の力量で上回ろうとする。
組織内のポジションについての大原則を考えてみると、役職は“ルール”によって規定されている役割のため、仮にそれぞれのテーマで部下が上司を上回ったとしても、組織内の位置関係は逆転しない。例えば、経理部長が社長よりもアカウンティングというテーマで上回っても、その位置関係は逆転しない。ヒラの営業スタッフが社長より現場のマーケット動向に詳しい場合も同様である。