バランスの悪い個人向け社債

最後に要注意なのが、「預金と比較すれば好利回り」を謳う個人向け社債です。その個人向け社債の利回りは国債よりも高いのが普通で、有利に見えるのは確かです。しかし、「有利に見える」というのは幻想にすぎません。社債の発行元である会社がデフォルト(債務不履行)すると、債券は紙くずになります。では、なぜ個人向け社債が国債より利回りが高いのか?

個人向け社債が国債よりもデフォルトしやすいからです。まだ株式は、株価が大幅に上がることもあるし、流動性も高くてイザというときに売りやすい。一方、個人向け社債は銀行預金よりも利息が少し高いだけなのに、デフォルトすればすべてを失うという儲けと損のバランスの悪い金融商品で、流動性が低くて売りにくい点も問題です。

3000万円の退職金があるなら、半分は預金、半分をインデックス投信に回すことをお勧めします。それも一気にではなく、毎月少しずつ同じ金額で購入していきます。そうした投資方法を「ドル・コスト平均法」といい、損失が一時発生したとしても、長期にわたるトータルの利益でカバーしていくものです。くれぐれも図にあるようなセールストークに耳を傾けてはいけません。

永野良佑
金融アナリスト。外資系金融機関でデリバティブを活用した商品設計などに長期間携わる。現在は執筆・講演活動も積極的に行う。著書に『新版 プロが絶対買わない金融商品』をはじめ著書多数。
(構成=吉田茂人)
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