定年退職を迎えると、退職金という形で2000万円、3000万円というまとまったお金を手にする。しかし、マイナス金利のあおりを受けて、預金していても利息は微々たるもの。そこで、つい手を出してしまうのが投資なのだが、そこには思わぬ落とし穴がいくつも待ち受けているのだ。今回は「教育投資」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2016年11月14日号)の掲載記事を再編集したものです。

なぜ、子どもの奨学金を親が返してはいけないのか

教育費は「聖域」と考えがちで、出し惜しみしないという人は多いでしょう。幼稚園から大学まで子どもにかかるお金は、オール公立で約1000万円、オール私立で約2500万円ともいわれています。塾や習い事など学校以外の出費も家族ごとに差があるものの、習い事にお金をかけすぎることは、将来の教育資金を前倒しで食いつぶしているのと同じなのです。

教育費プランで重要なポイントは、高校生までの教育費は家計から出し、貯金などを取り崩さずに済む年間収支の範囲内にとどめること。図にある大学教育に必要な学資は、小さいころから児童手当と学資保険でコツコツ貯めて高校卒業時までに用意しておきましょう。

しかし、奨学金や教育ローンを借りている家が多いのが実状です。現在、日本学生支援機構の奨学金をはじめ、なんらかの奨学金を利用している人は2人に1人を超えています。奨学金を借りるのは、子どもに借金を背負わせて社会に出すということです。支援機構から、毎月10万円の奨学金と入学時の50万円を加算して有利子(第二種)で借りると、返済は最大月2万9770円が20年も続きます。

若い世代の家計診断をしていると、夫婦で奨学金を借りており、貯金ができないという家庭が多いことに驚かされます。奨学金の返済があるせいで、その子どもの生活や進路設計にまでマイナスの影響が出ています。