トヨタ自動車やKDDIなど、日本の大手企業が次々とシリコンバレーに進出している。一方、シリコンバレーには日本のスタートアップに注目し、投資を拡大するVCも出てきた。日本から第2のグーグル、第2のアップルは出てくるのか。米国VC代表に聞いた。

世界に通用する日本の3分野

AI(人工知能)やロボットなど、いま世界が注目する最新技術の多くはアメリカ発が多い。それに対して、かつて技術大国と呼ばれた日本はなぜ最先端の技術が少ないのか、と問われることがあります。

フェノックス・ベンチャーキャピタル代表 アニス・ウッザマン氏

私から見ると、この問いは少しズレています。なぜなら、日本にはイノベーションにつながる技術が数多く眠っているから。いまはまだビジネスに結びついていないため見えにくいのですが、日本で研究されている技術は世界でもトップクラスです。

いま日本が世界をリードしている分野は3つあります。1つは、ロボット。東大や京大、九州大などにはロボットに関する素晴らしい技術があります。それらは外に向かって発表されていないだけで、シリコンバレーやMIT(マサチューセッツ工科大学)の技術と比べても優るとも劣りません。実際、東大発のロボットベンチャー「SCHAFT」は、グーグルに買収されました。

2つ目は、アニメーションやゲームの分野です。日本が優れているのは、技術だけではありません。注目したいのは、コンテンツづくり。独特のマンガ文化が社会に浸透しているので、コンテンツのレベルがとても高いのです。

3つ目は、ハードです。一時期、大事なのはソフトで、ハードは儲からないという風潮がありました。しかし、IoTが出てきて風向きが変わりました。IoTのコンセプトは、さまざまなモノにセンサーを入れ、データを蓄積、解析して、物事を改善していくということ。これはハードとソフトの組み合わせなので、日本のハードの技術が生きる場面が必ずやってきます。

このように日本にはシリコンバレーに負けない技術がありますが、日本のアピール不足もあって、海外の投資家はあまり投資をしていません。シリコンバレーで日本に積極的に投資している投資家は、私を含めておそらく片手で数えられるくらいでしょう。私は学生のころに東京工業大学で学んでいたので、日本の技術レベルの高さを知っています。しかし、そうでなかったら、いまごろ日本をスルーして中国の企業に投資していたかもしれない。それくらい、日本の注目度は低いのです。