スギ花粉症のシーズン到来。今年のスギ花粉飛散量は全国的には昨年の約5倍、近畿では約10倍、関東では約7~8倍と、大量飛散が予想されている。それは、昨年の夏が記録の残っている中で最高に暑かったことで、スギに花芽がたくさんついたからである。そして、花粉飛散のピークは、NPO法人花粉情報協会事務局長の佐藤紀男氏(東邦大学理学部訪問教授)によると3月上旬頃という。
アレルギー性鼻炎を訴える人は年々増加し、この10年で29.8%から39.4%にも増えている。これだけ増えた原因はスギ花粉症の増加が大きな原因と考えられている。
今年も数字を押しあげそうなスギ花粉症はスギ花粉が原因で起こるアレルギー疾患。人間の体には異物が侵入すると抗体を作り、異物を排除する免疫という働きがある。スギ花粉が体内に入ると抗体が作られ、鼻や目の粘膜にある肥満細胞と結びつく。そこにスギ花粉がどんどん入ってくると、肥満細胞からアレルギーを起こすヒスタミンやロイコトリエンが放出され、特有の症状が引き起こされる。が、「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」「微熱」では風邪なのか花粉症なのか患者には判断しにくい。今年初めて花粉症を発症する人ならばなおのこと。
患者にとってわかりやすい判断材料は「目のかゆみ」。風邪にはないが、花粉症では「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」「目のかゆみ」が4大症状である。が、勝手に自己診断することなく、耳鼻咽喉科を受診し、きちっと診察を受け、早期に治療を開始すべきである。
治療には(1) 「抗原の回避と除去」、(2)「薬物療法」、(3) 「手術療法」、(4) 「減感作療法」などがあるが、基本は(1)と(2)。スギ花粉を回避するために転地するのは難しいので、マスクやゴーグル、花粉がくっつかないツルツルのコートや帽子で回避・除去する。
もちろんメーンは薬物療法。ところが、この薬物療法に対し、「治療を受けても症状が改善されない」という声が50%近くも占めている。これは多くの医師の処方が第二世代抗ヒスタミン薬一辺倒になっているから、と指摘する声が上がっている。
薬物療法は「病型」「重症度」に応じて薬を的確に選択し、複数の薬を併用すると、オーダーメード的医療になり、より改善へと向かう。たとえば、「くしゃみ・鼻水型」「鼻詰まり型」「目のかゆみ型」「全身症状型」に分けられ、これに軽症から重症が組み合わされる。
●くしゃみ・鼻水型 ヒスタミンを防ぐ第二世代抗ヒスタミン薬が即効性あり。重症の場合は鼻噴霧用ステロイド薬を加える。
●鼻詰まり型 鼻詰まりに関与するロイコトリエンを抑えるロイコトリエン受容体拮抗薬を使う。重症時は鼻噴霧用ステロイド薬も。
●目のかゆみ型 目の抗アレルギー薬とステロイド点眼薬。ただし、ステロイド点眼薬を使うときは眼圧に十分な注意が必要で、眼科受診が基本となる。
●全身症状型 短期的にステロイド薬の飲み薬と第二世代抗ヒスタミン薬を使う。スギ花粉の飛散前や飛散初期にはヒスタミンやロイコトリエンの放出を抑える遊離抑制薬を使う。
的確な薬物療法を受けるために、主治医に自身の症状をわかりやすく伝える必要がある。たとえば1日のくしゃみや鼻かみの回数を伝える。鼻詰まりが強くほぼ1日中口で呼吸する、といった具合である。
【生活習慣のワンポイント】
食事でも花粉症の症状は多少改善できる。それが「蓮根」や「乳酸菌飲料」。蓮根に含まれるポリフェノールがアレルギー反応を抑えるという。また、乳酸菌飲料は「目のかゆみ」「鼻のかゆみ」を有意に改善する。蓮根や乳酸菌飲料を上手に食事に取り入れるのもよいだろう。