(3)手続き的制約を課す

裁判所は実体的な契約条件に介入することには消極的だが、ときとして強い側に手続き的制約を課すことがある。上場会社の発行済み株式の51%以上を保有する支配株主が、少数株主から強制買い取りを行いたいと思っているケースを考えてみよう。会社法では、買い取り条件は取締役会ならびに過半数の株主によって承認されなければならないとされている。しかし、支配株主は取締役会を牛耳っており、株式の過半数を握っているから、理論上は少数株主の持ち株を望みどおりの価格で一方的に買い取れる。

こうした事態への懸念に応えて、デラウェア州の裁判所(同州の裁判所の判決には他のほとんどの州の裁判所が追随する)は、支配株主が少数株主から強制買い取りを行う際の方法に手続き的制約を課している。

第一に、会社は支配株主から独立している取締役で構成される特別委員会を設置しなければならない。特別委員会は、独自に投資銀行と弁護士を雇わなければならない。特別委員会が少数株主に支払う価格について支配株主と交渉し、両者が合意に達したら、合意内容について、株主の承認を得なければならない。一般的には、「少数株主の過半数」がその契約条件を承認した場合にのみ、支配株主は少数株主から強制買い取りを行うことができる。

支配株主が強い交渉力を使って少数株主から一方的に強制買い取りを行おうとすれば、裁判所が介入して取引条件をチェックし、少数株主にとって「完全に公正」な条件にさせようとする。公正さを証明する責任は支配株主側にある。これは厄介なチェック基準であり、裁判所が介入した場合、支配株主は概して当初の予定より大幅に高い価格での買い取りを余儀なくされてきた。しかし、支配株主が特別委員会と誠実に交渉した場合には、少数株主側が、交渉の結果が自分たちにとって公正ではなかったことを証明しなければならない。

非良心性や暗黙の条件では、裁判所は「結果」を規制しようとし、強制買い取りの場合は、裁判所は交渉の「過程」を規制しようとする。いずれの場合にも、法的規範の目的は完全に優位に立つ側から弱い側を守ることにある。

強い交渉力を持っているからといって、相手から最後の1セントまで搾り取れるということではない。弱い側を守るために、裁判所が介入することもある。これは、自分の交渉力を高めようとしてはいけないということではないが、強い交渉力を持っている場合には、その強みをどれだけ活かせるかが法的規範によって制約される場合があることを肝に銘じておくべきだ。

(翻訳=ディプロマット)