初めは売れなかったので、販売戦略を見直した

アプライアンスB2B事業開発/商品企画チームのチェ・ジニ氏。

その後、さらに開発期間を約5年ほど有し、2011年に韓国で初代LG stylerがようやく完成した。しかしその当時、メインの販売ターゲットと定めたのがいわゆる「富裕層」だったこともあって、しばらくは大きなヒットにつながらなかったという。当時の販売コミュニケーションや戦略について、アプライアンスB2B事業開発/商品企画チームのチェ・ジニ氏が振り返る。

「はっきりと数字は出せませんが、高付加価値、プレミアムな製品としてイメージ作りやPR、コミュニケーション戦略を図ったため、初動は決してよくありませんでした。しかも5着ジャケットがかけられるサイズ感もかなり大きく、一般層には関係ないアイテムだと認識されてしまった。そんな風潮も足を引っ張ったようです」(チェ・ジニ氏)

モノはいいのに売れない。どうしたら良いか? ということで、翌年は「CES 2012」など海外の展示会にも積極的に出品。米国や中国などでも販売を開始する一方、韓国国内での販売戦略を見直すことにした。著名な大学教授7人と約3カ月をかけて、もう一度LG stylerについて研究しつくしたという。「LG stylerはどんな人に必要なものなのか?」を徹底的に見直したのだ。

LG社員のユーザーに話を聞いた。ナ・ジュヨンさんと息子のホ・ユンソン君は、「『LG styler』は家族にとってなくてはならない一品。ない生活にはもう戻れない」と話す。

「人が毎日シャワーを浴びるように、洋服も毎日シャワーできる……研究の結果、そんな感じで、普通の人が気軽に使えることこそが、『LG styler』にとって最も必要な特徴だと気がつきました。そこで販売ターゲットを一般層に変更し、2代目LG stylerでは、サイズを幅15センチ、高さ11センチほど小さくしました。一度に掛けられる服の数は5着から3着に減りましたが、既存ユーザーからの声を受けて、扉にパンツプレス機能をつけるなど、使い勝手と設置性能を高めました。5万~8万ウォン(約5000~8000円)程度値下げし、より購入しやすい価格帯にしたのもそのためです」(チェ・ジニ氏)

左が新婚ユーザーであるSHOPPERマーケティングチーム代理/キム・ドンヒョンさん、右が独身のユーザーであるH&A IMCチーム課長/チョ・ヨナさん。それぞれのユーザーがそれぞれのライフスタイルに合わせて使っている。

時代も追い風となった。韓国国内でも共働き家庭が増えるなど、男女共に毎日忙しく夜遅くまで働き、週末にまとめて洗濯したり、ドライクリーニングを出したりといったライフスタイルを送る人が一般的になってきた。

「サラリーマンは毎日スーツを着ます。毎日、なるべくしわや臭いがないキレイな服で出かけたいという要望も高まっています。でも、夜などに会食があると、そのスーツにはどうしても臭いがついてしまいますよね。それを翌日に着ないにしても、そのスーツを放置するのにはやはり抵抗があります。実際に『LG styler』がない家庭では今も窓を開けて、風を当てることで臭いを取っていますが、以前に比べ、特に都市部の外気は汚染されています。最近では韓国国内でもPM2.5や花粉、黄砂が飛んでいるため、それらが洋服に付着してしまっては意味がありません」(チェ・ジニ氏)