スーツや学生服に付いた臭い、どうする?

ビジネスマンによくあるシーンを想像してほしい。仕事終わりに取引相手や仕事仲間、友人と食事に出かける。場所はよくあるチェーン系の大衆居酒屋だ。会話が弾み、お酒も進む。しかし無防備に壁に掛けられたスーツは、焼き鳥の臭いが付き、誰かのタバコの煙の匂いが付き、さらに酒か何かの身に覚えのないシミが……。

一方、高校生の息子が部活終わりで帰宅すると、その辺に学生服を脱ぎ捨ててある。仕方ないねえ、と服を拾い上げてハンガーにかけると、汗だか何だかわからない男子学生特有の臭いが……。百歩譲って“青春の香り”と言い換えても、現実は単にクサいだけ。

クリーニングには出せないが、臭いを何とかしたいと思っても、これまではせいぜい「ファブリーズ」などスプレータイプの消臭剤を噴射する程度しか方法がなかった。マシにはなるが「キレイになった」と思えることは、まずない。

こうしたシチュエーションは、実はお隣韓国でも“あるある”だった。焼肉の本場である韓国は、香辛料の強い料理も日本より種類がはるかに豊富。ホームクリーニング機が開発されたのも納得だ。

「湿らせて、揺らす」ことでキレイになる

キム・ホンシク氏。彼の判断で、日本でLG stylerを発売することが決まったという

そもそも、家でドライクリーニングができるとはどういうことなのか。ドラム式洗濯乾燥機のようなものを思い浮かべる人もいるかもしれないが、LG stylerはそれよりもむしろ業務用の乾燥室に近い。

LG stylerでは「TrueSteam」と呼ばれる独自の乾燥技術が採用されている。LGエレクトロニクスのアプライアンスB2B営業チーム日本担当のキム・ホンシク氏に、どんな仕組みなのか聞いてみた。

「下部にある水タンク内に水を入れ、100度まで上昇させ、蒸気に変えます。コンプレッサーで気流を生み出し、90度程度の蒸気を庫内に充満させて、内部にある洋服を湿らせます。同時に洋服の掛かったハンガーを、毎分最大で180回ほど揺らすことにより、付着したチリやホコリ、菌を落とすとともに、シワなどを取ります。最後にヒートポンプによって40度程度の温度の低い気流を起こし、洋服から汚れた水分を落とします。汚れた水は下部の汚水タンクにたまる仕組みになっています」(キム・ホンシク氏)

開発のきっかけは「役員の海外出張」

LG stylerのアイデアが生まれたのは2002年頃。当時の白物家電部門の責任者だった、ある役員の海外出張がきっかけだった。

「彼は宿泊したホテルで着替える時に、スーツなどについたしわや不快な臭いをなんとかできないかと悩んでいました。ドライクリーニングは出せますが、当然時間もお金もかかります。そんな悩みを妻に打ち明けると、『浴槽に熱いお湯を張って、浴室に掛けておけばしわも臭いもとれる』といわれ、実際に試してみると本当にきれいにとれたそうです」(キム・ホンシク氏)

「『箱の中に入れるだけで、蒸気が洋服のしわや臭いを取ってくれる製品』があったら売れるのではないか?」と役員は会社にアイデアを持ち帰った。しかし当然、そんな製品の開発事例はない。そこから3~4年試行錯誤を重ねて、ようやく開発に着手できたという。

韓国の国会議事堂近くにあるデザインホテル。プレミアムルームにLG stylerの1stモデルがビルトインされていた。