無遅刻無欠勤の営業マンはなぜ強姦魔になったのか?

数年前、連続強姦事件の裁判を傍聴したことがある。罪を全面的に認めた被告人は30代。虫も殺さぬような優しい顔をした中堅企業の営業マンだった。

勤務状態は極めて良好で、無遅刻、無欠勤はもちろん繁忙期には進んで残業もし、休日出勤もいとわない模範社員。同僚の話では人柄もよく、親切で誰からも好かれていたという。子どもはいなかったが、夫婦仲も円満だと思われていた。

しかし、被告人には裏の顔があった。ある時期から、仕事を終えてから帰宅するまでの数時間を、獲物探しや犯罪の実行に費やすようになったのだ。

コンビニの入り口を見張り、好みの女性が見つかると後をつけるのがその手口。自宅まで尾行し、ひとり暮らしだとわかると侵入して襲いかかる。ときには外で、公園や神社の茂みに引きずりこみ、ナイフで脅してレイプすることもあり、わずか18日間で被害者は4人に達した。

目的を果たすと、被告人は何食わぬ顔で帰宅していたため、妻はまったく気づいていなかった。会社での態度も変わらない。顔を見られてしまったり、他にも証拠を残していたりしたために逮捕できたが、より慎重なタイプであれば、さらに犠牲者が増えたかもしれない。

法廷で動機を訊かれた被告人は、仕事と家庭のストレスから逃れたかったと答えた。

ストレスのきつさを動機に挙げる被告人はたくさんいる。信用できるかどうかは疑問だが、覚せい剤関係やチカン、露出狂はほとんどがそうだ。仕事が忙しくて残業続きだった、無理なノルマを課せられていた、業績が振るわないことの責任を押し付けられプレッシャーだらけの日々だった。このあたりがお決まりの理由だ。

ところが、この被告人は一味違う。自分で作り上げた模範社員、模範亭主像がカンペキすぎて、それを演じることに耐えきれなくなってしまったのである。