4技能入試という流れは確実に進んでいる

【三宅】どうしても日本は紙の上での勉強、読解中心にやってきました。会話は音のやり取りですから、声に出して練習することが絶対に必要です。

いま、センター試験があるわけですが、英語の出題を見ると、発音・アクセント、文法、長文読解が中心です。1技能とは言いませんが、読むことができれば高得点が取れます。とはいえ、4技能重視の流れもできつつあり、上智大学が「TEAP」を活用していますね。国に先駆けて、私学では英語4技能試験を導入する大学が増えました。国立大学でも筑波、東京海洋大学、ここに来て広島大学も発表しました。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』三宅義和著 プレジデント社

【吉田】国立大が変わると、本当に公立大・私立大も変わります。ですから、国立の大学が4技能テストを導入しようという動きがどんどん加速しているのは大きな影響力になることは間違いありません。

上智大が「TEAP入試」をスタートさせたわけですけれど、最初、つまり2年前ですが5大学ぐらいしか参加していませんでした。ところが、今年はもう60以上の大学で何らかの形で利用してくれています。4技能で入学基準を設けていこうという流れが確実に進んでいます。

ただ、問題点も見えてきました。スピーキングテストをする際、日常会話レベルで終わってしまっている部分がすごく多いとうことです。よく「ピーチクパーチクできても、読み書きできなければダメではないか」という意見も耳にします。高校の教員たちからも「昔に比べて読解力が落ちた」、あるいは「長文が苦手らしい」といった話を聞きます。

けれども、ディスカッションやディベート、スピーチを取り入れると、そこには読み・書きの要素が入ってきます。しっかりとした土台で、エビデンスをきちんと提供しなければ勝てないわけですよね。そこまで4技能を統合して、認知的にも負荷のかかるような言語活動をやれば、読解力が落ちるはずはありません。むしろ、上がるはずです。こうしたところは、中高の教育から考えなければならないでしょう。

そういう意味で今回、学習指導要領の改訂にあたっても他教科、いわゆる教科横断型の内容を入れていきましょうということになっています。上智では「CLIL」という内容言語統合型学習を行っていますが、言葉そのものを覚えるのではなく、言葉通して何か実のある内容をきちんと把握して、理解して、それについて意見を述べていくという、そういう授業形態に変えていかなければダメだと考えます。それが、できるかどうか。新しい学習指導要領が成功するかどうかは、それにかかってくると言っても過言ではないぐらいです。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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