人口減を見越してJR中央線が「減便」

では、都心を除いても、住みたい街ランキング上位、例えばJR中央線沿線などは安泰なのだろうか。実は東京駅から30キロメートルを超える立川駅以西や枝線ともいえる青梅線・五日市線沿線では、すでに人口減や空き家問題が顕在化している。そのあたりを見越してか、昨年のダイヤ改正からJR中央線、青梅線の一部が減便されているのだ。

毎年行われている地方移住のための相談会にも、東京西部の福生市、瑞穂町、奥多摩町などが合同でブースを出し、地方のような「空き家バンク」開設も含めて、地方移住を考える人たちに東京都内でのライトな田舎暮らしを提案している。新宿からJR中央線で30分圏内の小金井市でも、官民で空き家の有効活用を推進する会議がスタート。現在人口が増えている自治体でも、人口減への危機感を持っているのだ。

結婚、子育て世代の転入を促進するためにはどうしたらいいのか。

先日、東京郊外の賃貸集合住宅に暮らす何組かの子育て世代のサラリーマンが筆者に、持ち家はあるに越したことはないが、いくら金利が低くても30年以上先のことはわからないので、無理してローンを組むつもりはない、銀行に相談しても組めそうになかったので、子育ての過程で移住を含め柔軟に考えたいなどと話してくれた。「持ち家」に対する感情がどうも淡泊なのだ。

これが多数派とは即断できない。だが、ある地方の町の移住担当者の話を思い出した。子育て支援の一環として空き室の多い公営住宅を格安で提供、学費補助・医療費なども優遇した結果、住宅は埋まったが、子どもたちが成長し、支援終了時に次々と退去、町からも転出したというのだ。住民は「子づくり団地」と揶揄している。それでなくても苦しい財政事情のなか、せっかく投資しても出ていかれては自治体がますます疲弊していく。

予算のばらまきだけでは、人口の減少・流出は止められず、老人ばかりが目立つ巨大な住宅群が誕生していくかもしれない。自治体はますます智恵を絞らなければならないであろう。

(三星雅人=撮影)
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