マネーフォワードとの訴訟

【田原】クラウド会計は成長分野だからライバルも多いでしょう。従来の会計ソフト、たとえば「弥生会計」や「勘定奉行」が有名ですが、これらを売っていた会社は自働化しないのですか。 

【佐々木】少しずつ取り組みはじめているようですが、まだ本腰ではないように見えます。

【田原】まさに同じようなサービスをやっているマネーフォワードとは、いま訴訟をやっていますね。差し支えない範囲で経緯を教えてもらえますか。

【佐々木】僕たちは自動で会計帳簿をつける仕組みに関していくつか特許を持っていて、その特許を侵害されているという訴訟です。

【田原】マネーフォワードは、freeeより後ですか。

【佐々木】会社の設立は向こうが先ですが、会計ソフトという事業を始めたのは僕たちのほうが1年ぐらい先です。会計ソフト事業の規模も僕たちのほうが大きい。

【田原】どうして訴訟したんですか。

【佐々木】僕たちは、他にはないイノベーションを起こすことにフォーカスして投資を続けてきました。投資し続けるのは大変なことですが、大きな価値があると思ってやっています。それを続けていくには、重要なものについては可能なかぎり特許を取って、主張していかないといけない。イノベーションを起こす組織としてそこは譲れないし、創意工夫をきちんと評価する社会をつくろうよという思いもあります。

日本中の中小企業で当たり前に使うソフトにしていきたい

【田原】将来の話も聞きましょう。今後の展開を教えてください。

【佐々木】いま日本に企業の数は600万あるといわれています。その中の中小企業で、ごく当たり前に使われるソフトにしていきたいです。これまでの会計ソフトはパソコンにインストールして使うタイプだったので、データも個社の中に閉じていました。しかしクラウド化すれば、会計データを使って新しい価値を生み出すこともできます。その価値を、全国の中小企業の方に提供したいなと。

【田原】新しい価値って、もう少し具体的に言うとどういうものですか。

【佐々木】たとえば、freee上にあるデータをそのまま使って銀行から融資を受けることができるようなるかもしれません。あるいは、データを分析した人工知能が経営のアドバイスをしてくれるというサービスもありえます。そうすれば、どんな人でも簡単に経営ができるようになるかもしれない。そのモデルを日本なりどこかのまとまったコミュニティでつくって、いずれは世界に出していけたらと考えています。

【田原】ニュージーランドの会社はアメリカに進出したんですよね。佐々木さんの会社も、それに続くと。

【佐々木】まずは韓国とか台湾などの近い国からになると思いますが、いずれはアメリカもありえると思います。

【田原】わかりました。頑張ってください。

佐々木さんから田原さんへの質問

Q.日本は起業が少ない。どうすればリスクを取る人が増えますか?

本心では若い人も起業したがってますよ。大企業は売れるとわかっているものしかつくりません。結果がわかっている仕事に、若い人がワクワクできるはずがないじゃないですか。仕事でも人生でも、先が読めないからこそ本気になれるのです。

にもかかわらず、最近の若い人は安定志向が強い。原因は、失敗を必要以上に恐れているからでしょう。

それに対する処方箋は一つ。とにかく失敗してみることです。僕は失敗の連続でしたが、実際に失敗してみれば、たいしたことがないということが実感としてわかります。そもそも、どんなに優秀な人だって、新しいことに挑戦すれば99%以上失敗します。うまくいかないことがあたりまえなのだから、怖がるだけムダですよ。

田原総一朗の遺言:まず失敗せよ。経験すれば恐れが消える!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、
サンバイオ社長・森 敬太氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、3月13日発売の『PRESIDENT4.3号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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