ゴルフ接待はもう古い!ランニングから新しいビジネスが生まれる

2016年9月には、近畿日本ツーリスト、KDDIと連携した企画、「Run for 湯」をスタート。日本全国の温泉街やリゾート地とランナーをつなぐ、新たなサービスだ。もともと観光業や地域活性化の仕事に従事していた大森氏は、道という既存のインフラに新たな文脈を加えることで、地域の資源の本質的な魅力をダイレクトに伝えられるツールに変化させた。


Webサービス「Run for 湯」では、美味しい食事や温泉を備えた施設と、その周辺コースがセットで紹介されていて、予約まで行える。温泉施設では通常、事前の着替えや荷物預かりなどを行っておらず、ランニングを目的としてそのような使用を希望する場合、個別に施設と交渉を行わなければならない。「Run for 湯」を使えば、そんな手間や気苦労なく、ランニングと温泉が楽しめる。

「道も温泉も、すでに世界中にあるもの。これらをコンテンツとして捉えることで、無料の地域資源へと変えられます。世界中の道を地域資源にすることが、我々のミッションです」(大森氏)

地方の温泉やリゾートと連携することで、例えばゴルフ接待さながら、ランニングや温泉を介した接待というスタイルも実現しそうだ。もちろん、自分自身のリフレッシュや、家族サービスの一環でこのサービスを活用することもできる。パートナーの理解が得られず、走る時間が確保できないといった悩みを抱えるビジネスマンにとっても一役買いそうだ。

今後の展望としては、東京オリンピックを見据えたインバウンド向けのサービスなど、グローバル展開も視野に入れながら、まずは近日中にスマートフォンアプリのリリースや、スマートウォッチと連動させた初めて走るコースのナビゲーションなど、ランニング中にも豊かな体験ができる機能を提供していきたいと考えている。

元箱根駅伝ランナーが行き着いた先は、数字に捉われない、豊かなライフスタイルを実現させるためのラン。走ることそのものを楽しめば、心は物理的な距離を越え、より遠くまで行けるのかもしれない。

株式会社ラントリップ 代表取締役 大森英一郎
第84回箱根駅伝出場の元箱根ランナー。リクルートグループ退職後、観光系事業会社で集客全般を5年半経験。同時にNPO法人ランナーズサポート協会理事に就任。観光業界とランニング業界で感じた課題を解決すべく、Runtripの普及を提唱。
 
(撮影=岡村隆広)
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