悪い習慣から抜け出すには、強靭な意志が必要だと思ってはいないだろうか。しかし適切な工夫で、いとも簡単に克服できるのだ。

悪い習慣スパイラルの仕組みとは

あなたの「自分にとっての“悪い習慣”」はなんだろうか? 悪いとまでは言わなくとも「減らしたほうがいい」とわかっているようなこと。考えてみると、ひとつくらいは浮かぶのではないか。

「どうしても吸いたくなるタバコ」「やめられない甘い物」「あれほど誓ったのにまた二日酔い」、あるいは「スマホが見たくなる」「女の子を見るとつい声をかけたくなる」……など。

こうした習慣はスパイラルのようにぐるぐると自分のまわりを取り巻いて、ひとたびこの循環に入り込むと、なかなか抜け出せなくなるものだ。ふと気づくと、またその行為をしたくてウズウズしている。

「最近の研究では、癖や習慣は人間に備わった“学習プロセスの一環だ”とされています」とマインドフルネスを科学的に研究する心理学者のジャドソン・ブリューワー氏。悪いとわかっている癖は、その人とっては褒美のようなもの。褒美を得るために、その学習プロセスをたどってしまうのだ。

たとえば、おいしそうな食べ物があったら、脳が「カロリーだ! これで生存できる!」と喜ぶ。食べ物を食べ、味わい、そして「おいしい」と知る。特に砂糖が入っているときが危険だ。まず体が脳に信号を送り「今食べたものと見つけた場所を覚えろ」と指令を出す。このコンテクストに基づいて人は記憶を植えつけ、次にはこのプロセスを繰り返すことをこんな風に学んでいくという。

食べものを見る →食べる →満足する →繰り返す
(トリガー  →行動  →報酬  →繰り返し )

その後、脳は私たちにこんな風に話しかける。

「あのさ、これは食べ物の場所を覚える以外にも使えるんだ。気分が悪い時、何か気分がよくなるものを試したら?」。脳が与えてくれるすばらしいアイデアに感謝して試し、酒で気を紛らわせたり、チョコを食べて気分を高揚させたりすることを学んでいく。

これが、“悪い習慣スパイラルの仕組み”というわけだ。

同じプロセスでも、トリガーが違うこともある。胃からくる空腹信号の代わりに、たとえば悲しみやストレスといった、感情的な信号が食べるトリガーとなってしまうのだ。

「こうした脳のプロセスは、生存する方法を学んでいる過程です」とブリューワー氏。とはいえ、酒や喫煙や甘いもの……こうした習慣が過ぎれば健康を害したり、命を奪うことすらあるから手放しに歓迎はできない。

では、この悪い習慣から抜け出すためには、どうしたらいいだろうか。