物語を一緒に掘り起こし、共有する

また、遺品整理では、手紙や写真、小物類など、処分してよいかどうか迷う物がたくさん出てきます。物には大事にしていた人の思いや、その物にまつわる物語が詰まっています。

親が大切にしていた物なら、手元に残しておきたいと思うのが子の心情。しかし、親が亡くなった後では、その思いや物語も失われてしまいます。それはとても惜しまれること。金銭的な価値では測れない、親から受け継ぐべき財産といえるのではないでしょうか。

ですから、親がまだ元気で、自立生活ができているうちに、少しずつでも身の回りを整理していくことをお勧めします。もちろん、冒頭で触れたように、必ず抵抗に遭います。そこをどう乗り越えるかは、別の項で述べることにしましょう。

言うことを聞いてくれない親に腹を立てることなく、がまん強く進めていけば、少しずつ子の思いを理解してくれるようになります。片づけを拒絶していた当初から180度態度が変わるケースもよくあります。

ただ、ひとつだけ心にとどめておいてください。実家の片づけを、単純な不用品の処分だとは思わないでください。取りかかってみると、すぐにわかると思います。実家の片づけは、一見不用品の山と思われる物の中から、親が大切にしてきた物と、それが携えてきた物語を一緒に掘り起こし、共有する作業なのです。

安東英子
「日本美しい暮らしの空間プロデュース協会」理事長。福岡県の地元TVで13年間リフォーム担当。2014年より東京を拠点に。片づけ・収納アドバイス・リフォーム等々の実績5000軒以上を誇る。
(構成=高橋盛男 撮影=的野弘路、石橋素幸)
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