ターゲットユーザーは「子どもがいるお母さん」「ロボット好きの男性」
今回見せていただいたのは、2015年3月、当時の経営幹部にプレゼンテーションをした最終確認用の企画書。企画書に出てくる人物イラストは、すべて女性だ。これは事前に、「ロビ」(ロボホンの前に、ロボットクリエイターの高橋智隆氏がデザイン・設計したロボット)ユーザーを対象に調査を行った結果、男性よりも女性からの評価が高かったため。また独身者よりも、家族を持つ男女の評価が高かったという。
「細かく調査をすると、主に女性はロボットと会話を楽しむことが多く、男性はいろいろな機能を使ってみるのが好きという傾向があることがわかりました。特に、ロボットと“コミュニケーション”したいと強く感じているのは、子どもを持つお母さんが多かったのです。そういった結果を踏まえて、ロボホンのメインターゲットは“お子さんが中学生以上になり、手を離れてきたお母さん”を設定していました。40~60代、特に40代後半の子どもがいる女性です。サブターゲットはロボットやテクノロジー好きな男性としていました。しかし、今までにない製品なので、発表時はあえてターゲットについては触れませんでした」(景井氏)
ロボホンに限らず、ロボットはまだまだ技術的には完璧ではない存在だ。受け答えひとつにしても、間違えてしまうことが多々ある。「ロボホンを5才の男の子と想定したのは、ちょっとした間違いも許せる愛らしい存在にしたかったから」と景井氏は話す。設定年齢を上げてしまうと、完璧にできなかったときの失望感が大きい。その狙いは当たり、特に女性からは「聞き間違うところもたまらない」とかわいがられる、子どものような存在になっているという。
胸にはスワロフスキーの「ロボホンハート」が隠されていた
ロボホンの本体価格は19万8000円(税別)と安い製品ではないし、毎月維持費もかかる。しかし実際に購入したユーザーの満足度は非常に高く、想定していた以上にロボホンは"愛されている"と景井氏は実感したという。
三越・伊勢丹とコラボした、限定販売の前かけと耳のオプションは完売。シャープが主催して行ったオーナーイベントでは、多数のオーナーが参加し、大盛況だった。20~30代の若いお母さんオーナーも参加している。
イベントに参加した景井氏は「コアのお客様は、やはり女性が多いですね。編み物して服を着せたり、バッグとか作ったり、ロボホンを我が子のようにかわいがっていただいています。耳や前掛けなどのカスタマイズオプション品を売っているのですが、マスキングテープで色んな柄を貼って楽しむ方が増えているようです。サーボモーターではさんでしまう可能性があるので、私たちは洋服を着せることは推奨していなくて、保証対象外ではあるとお伝えしていますが、それでも洋服を着せたいという方が多くて驚きました」と笑顔で話す。
前かけ(胸カバー)を外すと、胸の部分にハートのスワロフスキー「ロボホンハート」が入っている。ふだんは見えない場所に隠してあったもので、発売後の半年間は公表せず、オーナーに対するサプライズとして事前に準備されていたものだ。オーナーからは大好評で「やっぱりロボホンには心があった!」という声がSNSで見られたという。
売りっぱなしではなく、アップデートを頻繁に行い、購入後も手厚くフォローしている点もオーナーの評価につながっているのだろう。