テロや戦争への対応とリーダーシップの在り方とは、セットで考えるべきものだ。これからの米国においては、真に米国が「強いアメリカ」として介入するべき戦争であるか否かについて、トランプ政権内で緻密な議論が行われるものと考えられる。ただし、そこでの判断基準は、単純に「アメリカはもはや世界の警察ではない」ということではなく、トランプが、米国や世界のトップリーダーとして、つまり「強いアメリカ」のリーダーとしてどのような対応をすべきかというものになると予測される。また、いったん戦うと決めた以上は絶対に勝つということは徹底するはずであり、このスタンスがグローバルにも周知徹底されれば、1つの抑止力として作用することもあるだろう。
今連載の「プロファイリングで探る! トランプの『資質』は大統領に適するか」(http://president.jp/articles/-/21170)で、トランプの資質のプロファイリングを行ったが、「アメリカはもはや世界の警察ではない」という発言よりも、“Make America Great Again”のスローガンをもとに「強いアメリカを取り戻す」ことが優先されるような気がしてならない。
実際に共和党の複数のメンバーから直接聞いた話によれば、トランプは強いアメリカを取り戻すということにこだわりがあり、世界のなかでも強いリーダーシップを発揮していくのではないかとのことであった。
ここでは詳細は述べきれないが、外交・安全保障上で大きなポイントとなると予想されるものとして、「米国×ロシアvs.IS」のテロとの対決、「中国vs.米国×フィリピン×日本」の南沙諸島、「米国×ロシア×イスラエルvs.イスラム教諸国」の中東、「米国×ロシア×欧州極右勢力vs.EU主要国」を指摘しておきたい。
トランプ政権の特徴は「ハイリスク、ハイリターン」
トランプ政権の誕生は、2017年の世界において、最大級のリターン要因でもあり、最大級のリスク要因でもあるだろう。
トランプの資質を予測した際に上位にランクされる資質として、「活発性」「コミュニケーション」「最上志向」「自我」「競争性」の5つと、次点として「戦略性」「着想」を挙げた。が、「活発性×コミュニケーション×着想」が組み合わされた際に起こるボラティリティーの高いトランプの行動は、大きな特徴の1つである。
トランプの強みとして予測される「戦略性」に大きなウエイトを置き、用意周到に準備されたシナリオにしたがって政策が順調に実行された場合、米国内での株高・ドル高が維持され、世界経済には多大なるポジティブな効果をもたらすだろう。
一方、減税や大規模なインフラ投資などが先行してしまい、財政赤字が急拡大、財政問題の方がクローズアップされるような展開になった場合には、反対に株安・ドル安に見舞われて、世界経済にもネガティブなインパクトを与えることになるだろう。