トランプ流スキームか、付加価値税か

生産拠点を海外へ移した企業への課税強化の方法としては「国境税」が取り沙汰されているが、今のところ関税そのものの引き上げではなく、法人税改革を目指すのではないかとの見方が多い。

具体的には米国の輸入企業には法人税アップを課し、輸出企業の税を軽減する仕組みとされるが、これはまさにトランプ氏、ナバロ氏、ロス氏が不公平と問題視する付加価値税、すなわち、輸出企業にはリベート、輸入品には課税と同様のスキームとなる。

こうした「輸出補助金」になりうる制度は、元来WTO(前身のGATTでも)では、輸出企業に有利な不公平税制として禁止されているのだが、例外規定として、「間接税である付加価値税だけは還付可能」との例外規定が、無理矢理1970年前後にフランス主導で追加された経緯がある。

トランプ政権の戦略として、米国の法人税改革がWTO違反というなら、世界の140の国と地域で採用している付加価値税は全てWTO違反となるとの論法だろう。

(1)付加価値税に付随する輸出還付制度が違反となれば、WTOの規定そのものの見直しがされ、米国以外の輸出企業への還付制度の廃止によって米国輸出企業は競争力を確保できる。
(2)WTO違反には相当しないとなれば、米国の法人税改革ももれなくWTO規定に抵触しないとして認められ、米国輸出企業には減税が可能。

米国企業からしてみれば、(1)WTOの付加価値税改革、(2)米国の法人税改革、いずれに転んでも悪い話ではない。

なお、EUは昨年公表した付加価値税の恒久改革にて、EU域内の輸出還付制度は今後廃止としており、方向としては現状話題になっている(2)よりも(1)の方が現実的に取り組みやすい状況だ。

本来的な意味において、米国企業が国際競争力を取り戻すことを主眼におくなら、(1)の輸出還付制度の廃止が賢明だが、トランプ政権が真の国民経済目線となるのか、ここはお手並み拝見としたい。

(宇佐見利明=撮影)
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