米国は付加価値税導入を見送ってきた

これはトランプ氏独自の発想というわけではなく、ことの経緯は大統領諮問委員会である企業課税特別委員会の1969年12月1日付の報告書までさかのぼる。付加価値税は輸出製品へのリベート(販売奨励金)であり、輸入品に課せられた相殺関税に相当する。歪な関税機能は自由貿易に反すると指摘し、米国は連邦国家として付加価値税導入を見送ってきた(日本を疲弊させる「消費税」を廃止せよ http://president.jp/articles/-/14975?page=4 参照 )。

選挙中のトランプ氏の発言として、「メキシコには付加価値税があるのに対して、米国にはない、米国製品はメキシコで16%課税されるがメキシコ製品が米国で課税されることはない、これは長い間放置されてきた欠陥協定である」がある。

“Let me give you the example of Mexico. They have a VAT tax. We're on a different system. When we sell into Mexico, there's a tax. When they sell in ? automatic, 16 percent, approximately. When they sell into us, there's no tax. It's a defective agreement. It's been defective for a long time, many years, but the politicians haven't done anything about it.”

一部の有識者は、こうした貿易に対して付加価値税はニュートラルであり、トランプ氏の指摘は事実無根と切り捨てていたが、税制に疎いのは、むしろそうした指摘をする有識者の方だろう。むろん、トランプ氏が税制に精通しているとは考えにくく、関税と付加価値税を結びつける発想はピーター・ナバロ氏(トランプ政権下で新設される「国家通商会議」のトップとして貿易政策を担当)とウィルバー・ロス氏(商務長官への起用が見込まれている)によるものだろう。

選挙期間中、両氏はインタビューの中で、「米国の貿易相手国は付加価値税(消費税)に依存しており、WTOでは輸出製品へのリベートを許可している。他国の輸出業者のように米国企業はリベートを受け取ることができない」と発言、WTO条約そのものの不公平な貿易慣行について指摘していた。