「表向きは税金の還付だが、実際はリベート」
我々は自由経済圏におり、商品の価格は常に値下げ競争にさらされる。しかも大企業とその取引企業であれば、価格決定では大企業が圧倒的に優位だ。値下げ後の価格に消費税を上乗せして大企業が払ったとして、取引企業にしてみればそれは税金でなく、引き下げられた価格の穴埋めにしかならない。であれば、表向きは税金の還付だが実際はリベートに相当するというのが米国の指摘だ。
さらに、米国製品が日本に輸入された際、消費税率が引き上げられると、米国製品は消費税分だけ値上がりする。こうした関税引き上げ同様の不利益を受けるため、米国にとって貿易相手国の採用する消費税・付加価値税は非関税障壁と映る。
そこで、リベート付きの間接税を引き上げ、法人税を引き下げるような自国企業の優遇策のセットを実施するなら、米国は報復も辞さない、とした公文書も残っている。
消費税を導入した89年は日米通商交渉の歴史の中で劇的な転換を迎えた「日米構造協議」が開始された。
これを境に、それまでの個別の物品交渉から一転、日本の構造そのものが米国の不利益という強烈な対日圧力に変わった。村山富市政権下で3%から5%への消費税増税を決定した税制改革関連法案が可決された94年11月より、米国からの「年次改革要望書」で内政干渉と見紛う数々の要望を突き付けられた。
社会保障と税の一体改革の特別法案を可決した野田佳彦政権しかり、消費税の導入、増税法案を可決、実際に増税した政権は短命だった半面、消費税には着手しないと就任早々宣言した小泉純一郎首相、米国の小売売上税を意識してか、売上税と称して大型間接税導入を試みた中曽根康弘首相は米国と蜜月の長期政権を保った。さらに消費税増税の話題が出たり実際に増税する時期に日本製品のリコール問題が米国で多発するのを偶然と言い切れるのか。
15年の米国経済は国民消費が牽引する堅調なステージとなっている。経済が好調なときは不満が外向きに発散されることは少なく、外圧の手も緩い。しかし、経済サイクルが一巡して景気後退局面入りした際には、例えばオバマ政権の1期目で見た輸出倍増計画のように、外向きに食指が動きやすい。それが消費税増税と重なった場合には、規制緩和なども含め相当な外圧となって日本に降りかかってくるのではなかろうか。
日本企業の7割を占める赤字企業でも納税義務がある過酷さゆえに滞納額が膨大なうえ、同盟国である米国との関係を悪化させる不公平税制であるなら、そして輸出優遇策を重視しても国内経済に還元される度合いが低いとなれば、消費税増税だけに邁進する経済的メリットはどこにあるのか。効果もないまま格差を広げて中間層の没落と同時に内需を疲弊させるだけの、日本の経済構造から鑑みてもそぐわぬ税制は廃止し、別の税制を模索するのが賢明ではなかろうか。それこそが失われた20年を取り戻す処方箋となろう。