日本のGDPを占める最たるものは民間消費の6割であり、民間設備投資も2割弱を占める。サラリーマンの平均年収はこの15年、概して低下傾向にある。そんな状況下で無理矢理増税となれば実質の手取りが減り、消費が減退するのは当然。そして最終需要が見込めぬ中では国内での設備投資など企業が積極的にできる道理がない。かように消費税は、日本のGDPのおよそ8割を占める内需をダイレクトに疲弊させてきた。
内需を復活させる=民間の消費を活発にするためには実質的な所得を上げる必要がある。例えば民間消費が7割を占める米国では2000年以降、ITバブル崩壊、9.11同時多発テロなど国内景気が低迷する事態となると一般国民に向けてもブッシュ減税が実施され、しかもサブプライム危機の影響が排除される12年まで継続された。また、カナダは91年に日本の消費税に当たる物品サービス税(GST)を7%で導入したが06年に6%へと引き下げ、世界的な金融危機の影響を見据えてか、08年には5%へと段階的な引き下げを行ってきた。景気が悪ければ減税を実施して、民間所得を実質的に引き上げ、消費で内需を活性化する政策が採用される。この当たり前の処方箋が、日本ではこの25年間まったく施されていない。
14年10月中旬に米財務省が発表した「為替報告書」は14年4月からの増税の副作用によって大規模な収斂が発生、日本経済の先行きに不確実性が増したと指摘。失われた20年からの脱却を目指すはずの政権が国内需要の活性化に水を差す増税を断行する矛盾に首を傾げる。
米国が日本経済の先行きを懸念するのは、一つには報告書にも記載されている通り世界経済の牽引役を期待してのこと。もう一つは後述するが、米国にとって非関税障壁となる日本の消費税への圧力という側面があろう。ただし、一国の税制について口出しするのは内政干渉となるので、増税による実体経済への悪影響について詳細な分析をしても、税制そのものへの言及はない。余談だが、この内政干渉の問題があるがゆえに、消費税は国際公約にはなりえない。