担当部門のことを考えるのは部長クラスの仕事

会社が新しい経営計画を打ち出そうというのであれば、「私は一体何をすればいいのか」と自問し、部内では「自分たちが目指す方向は何なのだ?」という議論をするべきでしょう。そうでないと、その社員や部署は新戦略を展開に乗り遅れ、戦力になることはできません。

こうした傾向は管理職だけでなく、トップマネジメントにも見られます。私がサポートをする際、まず、その会社の役員に「あなたのミッションは何ですか」と聞くことがあります。すると、専務・常務クラスでも、自分の担当部門の目標達成を挙げるケースがほとんど。役員というのは、まず全社的な方向性の中での自部門を考えるのが役割であって、担当部門のことを中心に考えるのは部長クラスの仕事です。

もし、自分自身が視野狭窄に陥っているという自覚があるなら、思い切って他部門への異動を願い出るのも悪くありません。いってみれば、畑違いの部署で新しい知見を養うわけです。最大のメリットは、物事を見る角度が変わり、多角的な判断ができるようになることです。それにより、いつか経営に参画するポジションになったとき、幅の広い意思決定ができるようになります。

そうでないと「井の中の蛙」にもなってしまいます。とはいえ、そう簡単に異動の希望が通るとは限りません。けれども、同じ部門にずっと居続けるとしても、さまざまな部門の人たちと積極的につき合うことによって全体観を獲得していくことができます。もともと、例えば人事のプロである人が広い視野を持てば「鬼に金棒」。しばらくして振り返れば、仕事の幅は人事ひと筋だった頃より確実に広がっているはずです。

柴田昌治(しばた・まさはる)
1986年、日本企業の風土・体質改革を支援するスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。著者に『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『成果を出す会社はどう考え動くのか』『日本起業の組織風土改革』など多数。近著に『「できる人」が会社を滅ぼす』がある。
(構成=岡村繁雄)
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